第9号                          1988/6/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]


先月はなんやかんやであまり本が読めませんでした。そんなわけで新しく読んだ本の中で「これは面白い。」と紹介できるものも見つかりませんでした。そこで、以前から私が気に入っている佐伯胖氏の著作に絞って紹介しようと思います。

【佐伯胖(さえきゆたか)著作紹介(年代順)】 

1964年慶応義塾大学工学部管理工学科卒業。
1970年ワシントン大学大学院心理学専攻Ph.D。
東京理科大学理工学部助教授を経て、現在東京大学教育学部助教授。
日本における認知科学「革命」の主導者。もうすぐ49歳。

(a)「学び」の構造(1975)東洋館出版\1,100
「学ぶ」とは一体どういうことか、我々は本当に学んでいるだろうかということについて分かりやすく述べたもの。多くのマジメ学生は自分が本当は学んでいなかったことに気づいてショックを受ける。
(b)イメージ化による知識と学習(1978)東洋館出版\1,300
「物事がわかるというのは私から発せられたたくさんの小びとがそこら中を駈けめぐることである」という「小びと認識論」を述べた佐伯氏の代表作。不思議に納得させられる。
(c)「きめ方」の論理--社会的決定理論への招待--(1980)東京大学出版会\2,000
管理工学を専攻していた著者にとって本来の専門といえる領域の著作。未読。
(d)考えることの教育(1982)国土新書\800 未読。
(e)教育学大全集16学力と思考(1982)第一法規\1,800 
読んだ記憶はあるがあまり印象に残っていない。
(f)「わかる」ということの意味(1983)岩波書店\950
「わかる」とは一体どういうことか、我々は本当にわかっているだろうかということについてわかりやすく述べたもの。小中学校で習ったようなことが本当はわかっていないことに気づいてショックを受ける。特に「やる気のない子は何を考えているのか」の章は私の最高のお気に入り。
(g)わかり方の根源(1984)小学館\880
「xx」とはどういうことかのオンパレード。日常何気なく使っている言葉を見直すことによって教育を考え直す視点を与えてくれる。
(h)「納得」をめざす追求過程(1985)明治図書\2,300
静岡大学教育学部附属静岡中学校の先生との共著。未読。
(i)認知科学選書10認知科学の方法(1986)東大出版会\1,800
認知科学を研究しようとする人のバイブル(といっては言い過ぎか)。
(j)コンピュータと教育(1986)岩波新書\480
いい本だけれど「岩波新書」の看板を意識し過ぎてか、イイコチャンぶった書き方になってしまい、佐伯先生独特の面白さが出ていない。
その他編書・訳書多数は省略。結論として、絶対お奨めは(a)(b)(f)。(守 一雄)
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html化1996.8.31