dohc2501

第38巻第4号                2025/1/1
XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII-XXXVIII

DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 発行責任者 守一雄
(kaz-mori@cc.tuat.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html


 新年明けましておめでとうございます。今年も『DOHC月報』のご愛読をお願いします。

 昨年はなかなか新しいことを始められないままダラダラと一年を過ごしました。年賀状ももう出さないで済まそうと思ったのですが、年末に2025年の数字の面白い性質を知り、これをネタに年賀状を作りました。その2025という数の面白さは「これが九九の合計になっている」ことです。また「一桁の数字 (1-9) の合計45の2乗」にもなります。さらに驚くことに「一桁の数字の3乗和」も2025なのです。すごく面白いと思ったのですが、世間ではほとんど話題になっていないようです。

 さて、2025年最初に紹介する本は、またイスラム教関係の本です。昨年のDOHC1月号で飯山陽さんの『イスラム教の論理』を紹介しました。飯山さんのおかげでイスラム教の見方が変わり、その後イスラム関係の本をかなり読みました。ただ、どうやら飯山さんはイスラム教研究者内では異端視されているようです。イスラム文化に詳しい人はほとんどがイスラム教を悪く言いません。他にも飯山さんと同じようなイスラム教観の本がないか探していたところ、小滝透『イスラム世界に平和は来るか?』(春秋社刊2024年)を見つけました。そして、小滝氏は1948年生まれの団塊世代、1970年代にサウジアラビアのリヤド大学を卒業している同大学初めての日本人留学生だとわかりました。(同じ頃に4歳若い現都知事の小池百合子さんもエジプトのカイロ大学を卒業(?)しています。)さらに、小滝氏は帰国後には仏教徒となり高野山専修学院で修行僧も経験しているイスラム教と仏教とに詳しい稀有な人物だということもわかりました。その小滝氏のサウジアラビア留学記がこの本です。出版が30年以上前なので新品はもう手に入りませんが、古書ならAmazonで買えるようです。幸い長野市立図書館にもあったので読んでみました。 (守 一雄)

【これは絶対面白い】

小滝 透『さらばネフドの嵐』

第三書館 (1991刊 古書)

(c)第三書館
 
 副題には「イスラームの神とサウジアラビア留学日本人」とある。約300ページの本書は3つの章からなり、最初の200ページ弱は第1章「砂漠の国の留学生」と題されたリヤド大学(1982年キングサウード大学に改名)に留学した6人の日本人学生の異文化体験記である。リヤド大学は日本では東大にあたる大学だが、その7割は外国人留学生で学費や寮費はタダのようだ。さらに長い夏休みには母国へ帰国するための往復航空券まで支給されるのだという。産油国のサウジアラビアは国の財政がそれほど豊かなのである。ただし、留学生はムスリムに改宗しなければならない。日本人留学生6人は「オスマーン小滝」などと改名しムスリムになって留学生活を送ることになった。抱腹絶倒の各種エピソードは読んでのお楽しみ。

 残りの100ページ弱は、第2章「日本人とイスラーム」と第3章「アラブを分析してみれば」と続く。第2章では戦前からの日本人とイスラームの関わりの歴史が示され、イスラーム教と仏教との本質的な違いが示される。第3章では著者のイスラームやアラブ世界との付き合い方についての提言が述べられている。小滝氏は30年前に書いた本書でこう述べている。「もし日本の都市の一画に [イスラーム圏出身者の] コミュニティができたらどうなるか?おそらく、次のような問題が起こってくるに違いない。」そして、小滝氏が予言する問題の例はすべて今の川口市で現実に起こっていることである。(守 一雄)

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