第36巻第2号                2022/11/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 [発行責任者:守 一雄]
(kazuo.mori[at-sign]t.matsu.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html


 首都圏での電車通勤をしていた頃にはターミナル駅などで時間潰しに書店をうろつくことがあったのですが、信州に戻ってからはそんな機会もなくなりました。それでも、松本大学図書館は松本市の書店に業務委託をしていたので、書店のような形態での新刊書コーナーやいろいろな企画があって重宝していました。今年からはそれもなくなり、代わりに市立図書館を利用しているのですが、なかなかブラウジングのようなことには適していません。そんな中で、「青少年図書コーナー」は割と気に入っています。今月紹介しようと思った本も、そこで見つけました。翻訳書ですが、訳も上手で引き込まれて読みました。(守 一雄)

(c)福音館書店
 

【これは絶対面白い】

E. シュレーファー『ボノボとともに』

福音館書店 (¥1,870)

 主人公のソフィーは、コンゴ人のママとアメリカ人のパパを持つ14歳の女の子である。ママはコンゴ民主共和国でボノボの保護センター長をしている。ソフィーはコンゴで生まれ育ったが、8歳の時にパパはコンゴでの仕事を終えてアメリカに戻ることになり、コンゴに残ってボノボの保護の仕事を続けることを希望したママと離婚してしまう。ソフィーはパパと一緒に、アメリカで暮らすことになったが、アメリカの学校に通いながらも、夏休みにはママの働いている保護センターに遊びにくることを続けてきた。事件はソフィーが14歳の夏休みにコンゴにやってきたときに起こる。

 コンゴを名乗る国はアフリカに2つあり紛らわしい。それは、元々は一つの王国だったのだが、西側(コンゴ共和国)はフランスの植民地、東側(コンゴ民主共和国)はベルギーの植民地となって、それぞれが別の国として独立したからである。両国の国境を流れるコンゴ川は、ナイル川に次ぐアフリカ第2の大河であり、両国の首都ブラザビル(コンゴ共和国)とキンシャサ(コンゴ民主共和国)はコンゴ川の両岸に位置している。不幸な植民地の歴史さえなければ、当然1つの国となっていたはずである。宗主国からの独立後も統一できないでいるのは民族紛争が絶えないからであり、それは先々月号で紹介した本にもあったように、その方がヨーロッパの国々にとって都合がいいからだ。

 さて、ソフィーは空港のあるキンシャサから運転手付きの車で、ママのいる保護センターへ向かう途中で、現地の男がボノボの赤ちゃんを売っていることに気づく。ボノボの赤ちゃんは今にも死にそうに痩せ細っている。保護されるべきボノボが違法に捕まえられ売買されているのだ。ソフィーは車を止めさせ、男からそのボノボを保護しようとするが、男は「いい客を見つけた」とばかりに100ドルだと言う。こうした売買をする人がいるからこそ、密猟も止められないのだということを知っているソフィーだったが、運転手の制止を振り切ってポケットにあったお金を渡して、ボノボを引き取ってしまった。

 覚悟していた通りにママからは叱責されるが、それでもオットーと名付けられたボノボの赤ちゃんはソフィーを母親がわりにして保護センターで暮らすことになる。そして、次のもっと重大な事件が起こる。ママが数頭のボノボをセンターから離れた自然保護区へ移送するためにセンターを留守にしている間に、政変が起こり、コンゴ民主共和国は無政府状態になってしまうのだ。アメリカ政府は自国民に緊急避難の勧告を出し、ソフィーも国連の平和維持軍の車両でキンシャサ空港に向かい国外へ脱出することになる。ところが、そのためにはオットーをセンターに残して行かなければならない。ソフィーは悩んだ末に国連維持軍の車に乗るのだが、オットーの泣き叫ぶ姿に耐えられなくなり、車を飛び出しオットーと一緒にセンターの一部となっているジャングルに逃げ込んでしまうのだ。

 ここまでで全体の約四分の一、あとはオットーを連れたソフィーの冒険が続く。コンゴで生まれたとはいえ、アメリカで何不自由なく暮らしてきた14歳の女の子が1人で、ボノボの赤ちゃんを抱えて、こんな過酷な冒険ができるだろうかとも思うのだが、「きっとハッピーエンドのはずだ」と思って、70歳を超えた爺さんのくせに、かなり自己投影しながら読んで楽しんだ。(守 一雄)

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