第35巻第3号                2021/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行 [発行責任者:守 一雄]
(kazuo.mori[at-sign]t.matsu.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html


 先々月末 (10月末) に衆議院議員選挙がありましたが、予想どおり、立憲民主党は支持を得られずに惨敗しました。なぜ「予想どおり」だったかというと、立憲民主党が言っていたことって「画期的な政策があるわけではありませんが、現実的な政策を誠実に実行しますから、そろそろ私たちにやらせてください」というだけのことだったからです。枝野さんに代わって、泉さんが代表になりましたが、泉さんでもおそらくダメだろうと思います。だって、結局のところ「政策が自民党と変わらない」んですから。

 新型コロナ、デフレ、少子化などを一気に改善できる妙案はありません。幸いワクチンはできましたが、経口治療薬が開発できるかどうかは、製薬会社の頑張り次第です。デフレ対策も「誰もが買いたくなるような新しい商品」が開発されるかどうかは企業まかせのことです。少子化対策だって、どうすれば日本の若者に「子どもを産みたいと思わせる」かなんてことは、どうにも策がありません。少なくとも、どれも政治家が頑張ってできるようになることではありません。

 政治家にできることはただ一つ、金を使うことです。新型コロナワクチンだって製薬メーカーの言い値で買い取り、国民に無料で接種できるようにしたのは、結局お金の力でした。新型コロナで打撃を受けた飲食店などを支えるための政策も「協力金」としてお金を配ったことでした。デフレ対策も少子化対策も、政治家にできる解決策は「お金を配ること」だと思います。デフレなどで生活に困窮している人々を救済するには、10万円なんてケチなことを言わず、「国民全員に100万円」配ってしまえばいいのです。

 少子化対策も、「赤ちゃんを生んだら一千万円」というのが有効だと思います。「来年1月1日以降に生まれた赤ちゃん」とすると今年の12月31日生まれの場合と大きな不公平が生じるので、「再来年 (2023年) 1月1日から(当面終了期限なし)」とするのがいいでしょう。そうすれば「今からでも仕込め」ますし。再来年はベビーブームの再来となるでしょう。

 もっともこんなことをするには「国民に100万円」で100兆円、「赤ちゃんに一千万円」で10兆円が必要で、そんな予算が組めるわけがないと財務省が大反対をするでしょう。でも、もうどうせ1,000兆円も国債残高があるんだし、1,000兆円も1,110兆円もたいした違いじゃありません。それに、嬉しいことに「通貨発行権を持つ政府はいくら借金しても大丈夫」という頼もしい理論もあるのです。(守 一雄)

(c)東洋経済新報社
 

【これは絶対面白い】

L.ランダル・レイ『MMT 現代貨幣理論入門』

東洋経済新報社 (¥3,740)

 もう20年以上も前のことだったと思うが、同僚の先生との雑談で「お金って世界全体でいくらあるんだろう?」という話になり、いろいろ考えてみたが結局わからないままだった。昔は金(きん)がお金として使われていて、その後、兌換紙幣になり、さらにそれが「金と交換できない不換紙幣」になったことはどこかで習った。でも、銀行預金とか有価証券とかまで含めるとまったくわからなくなってしまう。ところが、この新しい貨幣理論の定義を知り、なるほどなと思った。それは「貨幣とは債務証書である」というものである。誰かが誰かにお金を借りて「あとで返すよ」と約束すると「借用証」がお金として通用するようになる。もちろん貸す側は借りる側がちゃんと返してくれると信用していなければならない。私たちは国が必ず返してくれると信用しているので「一万円」というお金を使っているのである。逆に言えば、私たちが信用しているかぎり、国はいくらでも「借用証」を発行できる。だったら、もう既に借金が1,000兆円もある国を信用しているんだから、借金が1,110兆円になったって、別にどうってことはないじゃん。立憲民主党はこんなバラマキ政策を公約にするべきだったが、今回の選挙で、このMMTに基づいた公約をしていたのは山本太郎だけだった。(守 一雄)

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