DOHC1508

第28巻第11号                2015/8/1
XXVIII-XXVIII-XXVIII-XXVI-XXVIII-XXVIII-XXVIII-XXVIII-XXVIII-XXVIII

DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kaz-mori[at-mark]cc.tuat.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html

 海外での学会は夏に開かれることが多く、それは9月から5月までの学年暦で、夏休み期間中に当たるからです。でも、6-7月は日本では学期期間中のため休講にして出かけざるをえません。ただ、休講にするとその分の補講が必要となり、何かと都合が悪いので、6月のSARMAC総会のときは大学院の授業はSkypeを使って遠隔授業にしようかと考えていました。しかし、今回のSARMACは期間中ずっと忙しいことが予想されたため、「国際学会での発表の秘訣」のような教材を用意しておいて「自習」してもらうことにしました。

 自作の「国際学会での発表を成功させるためのヒント」というパワーポイントの他に、何か自習にいいものはないかとネット上を検索していたら、結構たくさん見つかりました。そんな中で、慶応大学の小野雅裕さんの「英語プレゼン技法」という大変面白い講演がYouTube (https://www.youtube.com/watch?v=L8ezBwBnBus)にありました。時間も1時間15分で一コマ分の授業にピッタリ。というわけで、これを利用させていただきました。

 帰国後、別の事情があって「府中」でネット検索をしていたら、小野さんのツイッターに辿り着きました。なんと小野さんは去年、農工大の府中キャンパスにも話に来ていたそうで、その時に農工大の学生がこの本をもじって「府中を目指して海を渡る」というコラージュを作ってきていたのだとツイッターに書いていました。お蔭でこの本のことを知ったわけですから、彼のコラージュは役に立ったわけです。講演を利用させていただいたお礼に早速本を購入して、読んでみたら予想通りとても面白い本でした。(守 一雄)


(c)東洋経済新報社
 

【これは絶対面白い】

小野雅裕

『宇宙を目指して海を渡る』

(東洋経済新報社¥1,620)

 小学校の頃に天文マニアの父親と毎週のように天体観測をしたことから宇宙の魅力に取り付かれた著者は、東大からMIT(マサチューセッツ工科大学)の大学院に進み、MITで博士号を取得する。その後、日本に戻り慶応大学の助教になるのだが、宇宙への夢は捨てきれず、ロサンジェルスのNASAジェット推進研究所に向けて海を渡る。

 小野さんは、学部四年のとき、同じ研究室の先輩でMITの博士課程に進学していた先輩の話を聞いて、MITへの進学を決意する。この本では、MIT大学院入学の準備から6年半のMITでの体験談を中心に、奇数章で時間軸に沿った話が進められる。一方、偶数章では「アメリカの大学院の仕組み」や「理系の学生にもなぜ国語力が必要なのか」など、後に続く後輩たちに役立つ知識がまとめられている。

 夢を追いかけての勉強や研究に忙しくしながらも、後輩のために日本で留学支援の活動を始めたり、中南米やアフリカを旅行したりした話も盛り込まれている。さらには「僕はいかにして伴侶を得たか」なんてことまでちゃっかり一章分充てて書いていたりする。子供の頃から小説を読むのが好きだったという小野さんは文才もあって、文学賞を授賞もしている。だから、この本もその文才が活かされていて読んでいて楽しい。

 ただ、これはまだ現在進行形の話である。小野さんがNASAのジェット推進研究所で夢を叶えられるのか、まだわからない。ノーベル賞を取ったり、大発明をしたりした人の成功物語ではない。小野さんの目標は「宇宙開発の歴史に名を残すこと」だというが、まだ「海を渡った」だけなのだ。はたして、この目標は達成できるのか。10年後の話も読みたい。(守 一雄)

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