毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kaz-mori[at-mark]cc.tuat.ac.jp)
http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html
昨年の原発事故後に海外移住を真剣に考え、それが困難であるとしても、せめて英語を日常的に使うようにしたいと考えました。そして、毎月1冊、英語の小説を読むことに挑戦することにしました。それから一年が経ちましたので、簡単に経過報告をしたいと思います。
先月までの15ヶ月で小説を16冊、ノンフィクションを4冊の計20冊を読みました。毎月まず初めにペーパーバックを読み、その後、月8冊(=年間百冊)になるよう日本語の本を7冊読むというペース配分を1年3ヶ月続けたことになります。昨年10月には「英語は日本語の5倍時間がかかる」と書きましたが、これはかなり見栄を張っていたもので、実際にはもっと時間がかかることもわかりました。小説では特に初めの部分が難解です。いろいろな登場人物が脈絡なく登場してきて、全体像がつかめないからです。また会話文もどれが誰の台詞か迷うこともしばしばです。そのため、本によっては出だしで何度か挫折しそうになったりしました。
というわけで、残念ながら「これはオススメと自信をもって推薦できる英語の小説」はまだ発掘できていません。しかし、英語の小説を読むことで、全体像が目次や要約にしっかりと示されている英語のノンフィクションの読みやすさを改めて実感しましたので、 J. Diamondの“Guns, Germs, and Steel”を紹介することにします。(守 一雄)
【これは絶対面白い】Jared Diamond
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これは人類史の本である。しかし、単に4大文明から現代までの歴史を述べたものではない。人類の歴史において、なぜ特定の地域が他の地域より栄えたのかについての大胆な仮説が提示されているのだ。中学生の頃、「コロンブスがアメリカ大陸を発見したというのは西欧社会からの一方的な見方で、そのアメリカ大陸にはちゃんと先住民がいたのですよ」と歴史の先生に言われ「なるほど」と思ったものだった。しかし「ではなぜ逆にアメリカ先住民がヨーロッパ大陸を発見することがなかったのか」と疑問を持つことはなかった。それはヨーロッパの方がより進歩していたからだと簡単に考えてしまっていたからだが、ではなぜヨーロッパの方がアメリカよりも進歩していたのかについて疑問を持つべきだった。南米ではインカ帝国が高度に文明を発達させていた。にもかかわらず、インカ帝国がスペインのピサロ率いるわずかの軍隊によって簡単に滅ぼされてしまったのはなぜなのか。戦争にも時の運が大きく影響し、インカ帝国は単に運が悪かっただけなのだろうか。
その答えが本書のタイトルになっている。スペイン軍が持っていた「銃・病原菌・鉄」がインカ軍にはなかったのである。では、なぜこれらがスペイン人には手に入り、インカ人には手に入らなかったのか。おっと、もう紙面が尽きたが、この本には思わぬ答えが仮説として述べられている。うーむ、なるほどそうだったのか。(守 一雄)