第20巻第11号               2007/8/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kaz-mori[at-mark]cc.tuat.ac.jp)

http://www.avis.ne.jp/~uriuri/kaz/dohc/dohchp-j.html


学生 先生、『生物と無生物のあいだ』読みましたよ。面白かったです。

教授 おっ、そうか。さすが農工大の学生。君らにまさに関係の深い内容だろ。

学生 ええ、それにこの本もう、アマゾンの売り上げランクでもベストテンに入ってるし。

教授 そうそう、この間、本屋に行ったら、早速「販促」がかかっていて、福岡さんの他の本も平積みされていたね。でも、福岡さんの関連本で一番はこれだな。

学生 なんていう本ですか?

教授 『マリス博士の奇想天外な人生』、福岡さんの本で紹介されていた「サーフィンをするノーベル賞学者」が自分の人生を語ったものだ。翻訳は福岡さんが担当している。これはホントに面白い。これは3年前に出た文庫だが、単行本は2000年に出版されている。

学生 マリス博士っていうのは、例のDNAの増幅装置PCR(ポメラーゼ連鎖反応)を開発した人ですね。

教授 そう、それで1993年にノーベル化学賞を受賞したんだが、そのアイデアを思いついたのは車でデート中のときで、この本もその話から始まっている。

学生 車でデート中って、独身だったんですか?

教授 いや、それはよくわからない。結婚して子どももいたはずなんだが、もう離婚して「独身」だったのか、それとも不倫だったのか。なにしろカバーの裏にも「無類の女性好きとしても有名で」と書かれているし、結婚も4回もしているし・・・。

学生 なんかスゴい人ですね。

教授 あはは、そうしたことをまったく隠そうとしてないのがスゴい。この本の中でも、結婚している時にも奥さんの公認の上で、奥さんと子どもを里帰りさせてあと、「年に2週間、クリスマス直前とイースター直前の1週間ずつ」だけ「私の悪癖」のために何をしてもいい期間を認めてもらっていたと書いてある。「1970年代にして、私たちはかくもススんだ夫婦であった」んだそうだ。

学生 ノーベル賞を取るようなエラい研究者っていう人に対するイメージが変わりますね。

教授 もっとビックリすることもあるぞ。覚せい剤やLSDなどの麻薬もやっていて、そのこともこの本に書いてあるんだ。それも、別に秘密の告白って感じではなく、さも当然という感じに。まだ効果のよくわからない薬物を「本来飲むべき量の10倍」も飲んでしまい、二度と正常に戻れなくなる恐怖を味わった体験も書いている。

学生 うーん。

教授 一言で言って、「常識はずれ」の人で、そんな人がノーベル賞を取ってしまったもんだから、悪戯し放題のやんちゃな王子様って感じになってるんだな。それがまた痛快で面白い。ノーベル賞を取ったもんだから、スウェーデンの国王一家とか、アメリカの大統領とか、のエラい人にも会える機会があるわけで、そういうときにまで悪戯をしかけるんだ。ノーベル賞の受賞前に日本国際賞を受賞した際には、日本の天皇皇后両陛下にも会っていて、その時に皇后陛下を「スウィーティ(かわい子ちゃん)」と呼んだそうだ。

学生 ゲッ。

教授 まだまだあるぞ。この本によると・・・

学生 うわっ、先生もう言わないでください。読む楽しみがなくなっちゃう。                                  (守 一雄)

  
(c)早川書房
 


【これは絶対面白い】

キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』

(福岡伸一訳)
ハヤカワ文庫(¥777)


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