第18巻第7号              2005/4/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)

 新入生の皆さんご入学おめでとうございます。

 DOHC(Dokusho One Hundred Club)は、1987年の春に発足した読書クラブです。「読書クラブ」といっても、特別な活動をするわけではなく、「私もたくさん本を読もう」と思ったら、その時からあなたもDOHCの会員です。「1週間に2冊1単位につき2冊本を読む」という「1212運動」が会員の唯一の活動です。1年は約50週ですから1週間に2冊で年100冊になります。また大学における1単位は1週間の勉強時間(=45時間)に基づいていますから「1単位につき2冊」も「1週間に2冊」も結局は同じことになります。

 この「DOHC Monthly」は、会員拡大のための宣伝を兼ねた書評ミニコミ紙です。本は読みたいけど何を読んだらいいかわからないという人のために、【これは絶対面白い】という本を毎月1回紹介してきています。「毎月1日発行」が原則ですが、最近は発行がいつも遅れ気味です。「DOHC Monthly」は、バックナンバーを含め、ウェブhttp://zenkoji.shinshu-u.ac.jp/mori/dohc/dohchp-j.htmlでも公開しています。

 受験準備中にはなかなか読書ができなかった人も、大学では読書時間がたっぷりあります。ぜひ読書の楽しさを知って、在学中に400冊読破を目指してください。(守 一雄)

 
(c)日経BP社


【これは絶対面白い】

村上宣寛『「心理テスト」はウソでした。』

日経BP社\1500


 著者の村上氏は心理学界でも有名な変人。この人の存在そのものがすごく面白いのだが、著書ももちろんどれも面白い。このDOHC Monthlyで村上氏の本を紹介するのもこれで3回目である。改めて過去に紹介したものを読み直してみると、この本は1回目に紹介した『最新コンピュータ診断性格テスト』のパワーアップ版だということに気づいた。すでに10年以上も前から、「心理テストの多くが嘘っぱちだ」と村上氏は主張していたのだが、学会の変人が富山で叫んでいてもほとんどの人は耳を傾けなかったようだ。

 しかし、今回の本はおそらく学会に大きな影響を与えるに違いない。まず、この書名がスゴイ!さらには、村上氏自身が心理テストの研究開発で着実に実績を積み重ねてきていることも重要である。村上氏はもはや単なる「富山の変人」ではないのである。真面目にテストの開発をしている心理学者がいない現状の中で、村上氏は間違いなくこの領域の第一人者である。実績がある人の指摘は無視できない。

 その第一人者からウソだと言われてしまった心理テストは、「ロールシャッハテスト」「矢田部ギルフォード性格検査(YG検査)」「内田クレペリン精神作業検査」という日本で最もよく知られているものばかりだ。これらは一般の人でも知っているような心理テストの定番中の定番である。実を言うと、私も村上氏の以前の本を読むまではこれらのテストが心理学の正しい手続きによって作られたものだとばっかり思っていた。昔は授業でも「ちまたにはインチキな心理テストが出回っているが、このYG検査こそはちゃんとした信頼のできる心理テストなんだよ」と言って教えたりしていた。

 しかし、YG検査もインチキ検査だったのである。正しい心理テストであるためには、背景となる理論が正しいこと、テスト作成に際して正しい標準化の手続きが取られていること、そして作成されたテストの信頼性と妥当性がキチンと検証されていることが必要であるが、YG検査はこのすべてに「不合格」なのである。しかも、実際の開発者である関西大学の辻岡氏の専門書や論文はゴマカシだらけ、採点手続きの印刷ミスが放置されたり、質問項目がこっそり入れ替えられたりとインチキが何重にもなされていたのである。こうしたインチキを野放しにしてきた心理学界全体の責任も重いと思う。もっともこんなテストが使われ続けてきているのも「実は誰も心理テストなんか信用してない」と言うことを示しているのかもしれない。血液型や占いと同レベルの遊びにすぎないのだ。

 なお、今月号は4月1日発行であるが上記内容はウソではない(念のため)。

 (守 一雄)


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