第15巻第3号              2001/12/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)

 21世紀の最初の年2001年が終わろうとしています。2001年の重大ニュースは ニューヨークのテロ事件、そしてその結果として戦後初めて自衛隊が戦地に派遣 されるという平和憲法に反する行為がなされてしまったこと、国内では、狂牛病 の発生と農水省の対応のまずさの露呈、などがトップを占めることになるでしょ う。

 しかし、こうした「重大ニュース」の陰に隠れて、本当に重大なニュースが 「ありゃ、またか」程度にしか捉えられないままになってしまいました。先月起 こった静岡県の中部電力浜岡原発での緊急炉心冷却装置(ECCS)系の配管破断事 故のことです。この事故では、原発の心臓部にあたる圧力容器でも水漏れが見つ かっていて、日本の原発では「圧力容器などの中心部分は大丈夫」「緊急炉心冷 却装置があるから大丈夫」と言われてきたことがどちらも覆されてしまったこと になります。どちらも国内では前例のない大事件だったはずなのですが、ほとん ど注目されませんでした。

 ニューヨークのテロ事件では、航空機の事故に対する損害保険の再保険を引き 受けていた日本の損害保険会社が倒産してしまいました。損害保険会社のくせ に、保険料収入に目がくらんで、万一の事故への備えができていなかったという まったくなさけない話ですが、電力という恩恵に目がくらんで、万一の事故への 備えがなされていないことは原発も同じことです。原発の事故は想定される被害 が大きすぎて、保険を引き受ける損害保険会社がないんです。もしチェルノブイ リ級の事故が起これば、日本の国そのものが破産する可能性があります。ソ連が 崩壊したのもこの原発事故のせいだと思います。保険にも入れないような恐ろし いものを私たちは作ってしまったのです。

 もっと恐いことがあります。先日発表になった、東海地震の震度予測では、予 想される震源域が従来よりも西側にやや移動して、なんとその中心がちょうど浜 岡原発のあるところとなりました。原発の真下に震源地がある!ところが、この 予測を伝えるテレビ画面の地図には浜岡原発は描かれていないのです。電力会社 がスポンサーのテレビでは都合の悪い情報は隠されてしまいます。「ああ、この 地図のとおりだったらどんなに幸せだろうか。」しかし、現実は地図のように都 合良く危険物を消去できません。予想される震源域の真上にまさに今回の事故を 起こしたものを含め4基もの原発があるのです。

 いったいどうすればいいのでしょうか?まずは、地震が起こらないこと、事故 が起こらないことを祈ることでしょうが、そうした祈りを続けつつ、徐々に原発 をなくしていく以外に道はありません。でも、そのために私たち個人は何ができ るでしょうか?幸い、新しい原発を作ることには数年前からブレーキがかかった ことがハッキリしてきました。そのブレーキを強めるために私たちができること は、電気のムダ使いを止めることしかないと思います。「ムダ使いを止める」と 考えるだけでは当たり前すぎて実効が薄いかもしれません。そこで、「意識的に 電力の使用を控える」ことにしましょう。ムダ使いではなく、少しくらいの不便 をガマンするくらいのことを心がけてみましょう。そして、そうした決心をする ためにもこの本を読みましょう。

             (守 一雄)


【これは絶対面白い】

鎌田慧『原発列島を行く』

集英社新書\700

 「いまのわたしの最大の関心事は、大事故が発生する前に、日本が原発からの 撤退を完了しているかどうか。つまり、すべての原発が休止するまでに、大事故 に遭わないですむかどうかである。」

  「はじめに」において鎌田さんはこう述べる。これを最も楽観的に解釈すれ ば、日本は原発の大事故に遭わないままになんとかすべての原発を停止させるこ とができる可能性があるということになる。本当にそうであってほしい。

   原発についての本を読むといつも憂鬱になる。しかし、現実から眼をそらさず に、「覚醒」を保っていくためにも、原発関連の本を読み、それを紹介し続けて いくつもりだ。絶望せずにルポを書き続ける鎌田さんもおそらく同じ思いからだ と思う。

   (守 一雄)

 


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