第14巻第12号              2001/9/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 例年のことですが、8月末から9月初めにかけてはなんとなく憂鬱で、どうやらこれは子どもの頃に染みついた「夏休みの終わり」の気分がいつまでたっても抜けないせいなのだと思います。しかも「9月発行のDOHCも8/31までになんとか完成させねば」とまるで夏休みの宿題を追体験しているようでした。特に自分で自由にテーマを決められることになっていて、だからこそ、テーマが決まらずに困ってしまうという「自由研究」の感じですね。(とかなんとか、例によって「いいわけ」を述べた上で、今月号も『信濃毎日新聞』2001.7.8掲載の書評の再録です。ごめんなさい。「担任の先生が替わったからいいや」と言って、去年の自由研究の焼き直しを提出する感じです。)   (守 一雄)


【これは絶対面白い】

正高信男『子どもはことばをからだで覚える』

中公新書\700

パパ  ♪情オ熱の本能オー♪

ジロー うわっ、オヤジのくせにキンキの歌なんか歌わないでよ。

パパ  いいじゃないか。ジローが言葉を覚えたのも、ジローが赤ちゃんのころ、パパがこうやっていろんな歌を歌ってあげたからなんだぞ。

ジロー なにそれ?いいから歌うのやめてよ。外に聞こえたら恥ずかしいじゃん。

パパ  恥ずかしくなんかないさ。親は子どもと一緒にいると歌を歌いたくなる。そして、子どもはその歌を聴いて言葉を覚えていくんだ。ほら、この本にそう書いてあるんだよ。

ジロー でもそれは子守歌とか童謡とかのことでしょ。

パパ  ま、実はそうだ。よくわかったな。でも、ジローが赤ちゃんの時には童謡だけじゃなくて、流行歌も歌ったぞ。そうそう、この本にこんな面白いことも書いてあるんだ。同じ歌でも、大人は子どもに向かって歌うときは、音の高さが高くなって、テンポはゆっくりになるんだって。パパの声はもともと高めだから、子どもに聞かせるにはピッタリなんだ。

ジロー はい、はい。でも、もうボクは言葉を覚えたから、もう歌わないで。

パパ  そういえば、ジローももう中学生なんだからこの本読めるよな。この本は、この他にも言葉の習得についての驚くべき発見がたくさん紹介されていて面白いぞお。ね、読んでごらん。

ジロー 「もう歌わない」と約束するならね。少なくともそのフリをつけるのは絶対やめて。

パパ  そんな冷たいことを言うなよ。言葉の習得には、フリも大事なんだぜ。この本のタイトルも『子どもはことばをからだで覚える』となっているだろ。たとえば、小学校の低学年くらいだと、「行く」と「来る」の使い分けがまだうまくできていない子がずいぶんいる。ビデオにとって言葉を使うときの様子をよく観察してみると、言葉を使うときの身体の動きに違いがあることがわかったんだ。どう違うんだと思う?実は、使い分けができる子は、「行く」と言うときには腕や手を身体の中心から外側に向かって動かしていることが多く、反対に「来る」と言うときには、外側から中心に動かしているんだ。言葉の意味をちゃんと覚えるためにはフリが大切ってことさ。わかった?

ジロー わかった、わかった。だから、もうこっちに来ないで。

                                (守 一雄)

 


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