第14巻第11号              2001/8/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 暑いです。つまらない選挙でした。

 田中真紀子外相が相変わらずいろいろ物議を醸しているようですが、田中さんには外務省を徹底的に改革してもらいたいと思います。つぎつぎと外務省の体質が現れた事件が発覚していますが、4年前に出版されたこの本にすべて書かれていたことでした。タイトルの「お笑い」とか、著者の「テリー伊藤」から、単なるおふざけの本だと思ってはいけません。霞が関の官僚たちの醜聞は、少なくとも国内にいるので、目に付きますが、外国、それも普通の人にはオリンピックの開会式くらいでしか見聞きすることがないような国々で、外務官僚は私たちの税金で「王侯貴族」のような生活をしているのです。この本を読むと、一連の外務官僚の不祥事が起こるべくして起こったことがよくわかります。

 そういえば、大昔ですが、知り合いの大学教授がインドに技術指導に行っていたときの話を聞いたことがありましたが、何人もメイドを雇い、自宅の庭に自家用のゴルフコースまであるというような生活だったそうです。ODAで2兆円近いお金をばらまいている日本の外交官が現地で王様のような処遇を受けるのは当然かもしれません。

 そうした王様のような生活は、「外交官としての仕事」なので、当然ながら、外国にいる間の生活費は税金で支給されています。しかし、外国で王様のような生活をしている間に、国内の銀行には給料もちゃんと振り込まれているんです。実は、私たち国立大学教官も「官」ですから同じことで、在外研究などで外国の大学に行っている間、外国での生活費が支給される他に、通常の給料はそのまま国内の銀行に振り込まれています。だから、1年間海外出張していると、丸々1年間の給料が貯金できちゃうわけです。同じことが「大使なら2-3年で1億円が貯まる」そうです。

 それでも、こうした破格の優遇措置がなされるのも、日本から遠く離れた外国で、日本国民の代表としてたくさんの難しい仕事をこなしているからだとすれば、納得がいくのですが、どうやらそれもあやしいようです。仕事は現地採用の下っ端役人に任せてしまえばいいのだそうです。(もっと酷いこともあります。詳しくは本書をお読み下さい。)

 だとすれば、こんなにオイシイ職業はありません。学生諸君は今からでもぜひ外交官になりましょう。えっ、「でも語学が苦手」だって!?心配は要りません。外国語で必要なのは英語だけで、しかも「和訳と英訳の筆記だけ」なうです。しかも、「外交になど、とても使えはしない語学力の持ち主が、ぞろぞろ合格する」レベル。本当に語学力のある人はノンキャリアとして別に採用するので、キャリア官僚は語学なんかできなくてもいいわけです。さあ、君もこの本を読んで、外交官を目指そう。 (守 一雄)


【これは絶対面白い】

テリー伊藤『お笑い外務省機密情報』

飛鳥新社\1,300

 映画『パールハーバー』が上映されている。日本では「真珠湾奇襲」と呼ばれる太平洋戦争開始の戦闘は、世界的には「汚い、だまし討ち」とされてきた。それは、宣戦布告をする前に攻撃を始めたからだ。仲が悪い者同士であったとしても、いきなり殴ったら、それは殴った方が責められるのは当然だ。

 しかし、宣戦布告がなされなかったのではなく、宣戦布告が遅れてしまい、攻撃後になってしまったというのが真相である。では、なぜ宣戦布告が遅れたのか。それは、当時の在ワシントン日本大使館が、電報で届いた「宣戦布告」状を、パーティー疲れやらなんやでアメリカ政府に渡すのをさぼったためなのだ。

 こんな信じがたい事実を、外務省はずっと知らんぷりして隠してきた。外務省は半世紀も経った1994年にこの事実を公式に認めたが、この世界史に残るような大失態について、当時の関係者の責任はほったらかしのままなのだ。

 小泉首相の「靖国神社」参拝の問題も議論されているが、もっともっと大事なことが忘れられている。(私も4年前に読んだこの本を忘れかけていたところだった。もう一度読んでまた怒りがよみがえってきた。)     (守 一雄)


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