第14巻第10号              2001/7/1
XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV

DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV-XIV

毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 ご報告が遅くなりましたが、今年の4月から2年間の任期で、『信濃毎日新聞』の書評委員をすることになりました。近刊(発行3ヶ月以内)の中から面白い本を選んで、月に1から2回、千字程度で紹介するというものです。掲載は全国紙などと同じ日曜日の朝刊です。

 書評委員というのは10人くらいいて、それらの人たちが入れ替わり書評を書くわけですから、どこかで私らしさを出して目立ちたいものだと思い、学生と教授の対話スタイル書評を書くことにしました。第1回目(2001.4.1掲載)は、自己紹介も兼ねて、DOHCのこともそれとなく含ませながら、かなり気合いを入れて書きました。

 地方紙とはいえ、自分の書いた本の書評は著者も読むわけで、1ヶ月後くらいに出た『週刊文春』で著者の佐野さんがこの書評を面白いと言っていました。これで自信をつけて、その後も対話スタイルでの書評を続けています。(先月の『DOHC月報』もその勢いで同じスタイルにしちゃいました。)

 それでも3ヶ月が過ぎちょっと息切れしてきたところです。ま、15年間も『DOHC月報』の発行を続けてきたんだから、2年間の書評委員はチョロいと思って引き受けたのですが、DOHCと新聞書評と両方だと月2冊以上のペースになり、さすがにちょっと苦しくなりました。そこで、今月は、上で述べた新聞書評の第1回目掲載分を再録することにしました。       (守 一雄)


【これは絶対面白い】

佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』

プレジデント社\1,800

学生:あれ、先生が、推理小説ですか?めずらしいですね。

教授:推理小説じゃないよ。「だれが殺したか」じゃなくて、「殺すのか」になってるだろ。ノンフィクションさ。

学生:なるほど、で、いったい「だれが本を殺す」っていうんですか?先生の出すたくさんの課題図書も殺してほしいくらいです。だいたい、どこで本が死んでいるんですか?生協の本屋にも図書館にも本は溢れているじゃないですか?

教授:そう、たしかに本はたくさん生まれている。日本では一年間に6万冊以上の新刊が出ているんだ。君らに言っている「一年間に百冊読め」なんて、新刊の六百分の一にすぎない。今日、一日だけだって180冊もの新刊が出ている計算になる。

学生:いったい「だれがそんなに本を生む」んですか?

教授:お、君にしてはおもしろい洒落の聞いた質問だね。実は、本が死んでいるのも、本が生まれすぎていることに大いに関係があるのだ。6万冊を越える新刊書の4割が書店から返品され、その返品された本のほとんどは廃棄され裁断されてしまう。本の世界はチョー「多産多死社会」なのさ。

学生:じゃ、先生、その「返品」というのが犯人なんですね。

教授:「返品」は犯人ではなく、本の死の「原因」にすぎない。要は、どうして「返品」がそんなにも多くなってしまうのかなんだ。容疑者は「書店」「流通」「出版社」「図書館」・・・

学生:だれが犯人なんですか?先生早く答えを教えてくださいよ。

教授:ずばり犯人は君だ。君が本を買わないから、本が返品されてしまうのだ。

学生:えっ、そんな。だって、本屋に行っても、買いたいと思う本はあまりないし、買いたい本を注文してもなかなか来ないし・・・・つまらない本を書いて、学生に買わせようとする先生のような人がいるから売れなくて返品も増えるんじゃないですかあ。

教授:おっと、反撃に出たな。私の本は売れているぞ。それより、無駄口をききすぎて、本当の「犯人」について説明するスペースがなくなった。しかし、この本はノンフィクションとはいえ、推理小説みたいなものだ。「犯人」を言ってしまうのはルール違反だから言わないのだ。

  (守 一雄)


DOHCメニュー