第13巻第9号              2000/6/1
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DOHC(年間百冊読書する会)MONTHLY

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毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]

(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)


 初夏の爽やかな季節のうちに紹介しようと思っていたのに、今年は梅雨入りが早そうで、少し遅くなってしまったかもしれません。今月紹介するのは、オートバイの本です。

 とはいっても、私自身はオートバイには乗りません。学生時代に友達のものを借りて、ほんの少し走ったことがあるくらいで、ほとんど乗ったこともありません。実を言えば、むしろオートバイは嫌いなほうです。あんなものは無くなったほうがいいとさえ思ったこともあります。

 若者はスピード感に魅力を感じるようですが、「堅実派」の私には危険きわまりない乗物に見えます。自動車のシートベルト着用が義務づけられたり、子どもをチャイルドシートに座らせることを義務づけていながら、ヘルメットをかぶるだけでほとんど無防備のオートバイの乗車を認めているのは、なんともおかしな話だと思います。私の子どもがオートバイに乗りたいと言っても絶対反対するでしょう。

 周囲にも迷惑な乗物だと思います。まず、音がうるさい。マフラーを改造してわざと大きな音を出して走るヤツラは論外ですが、ごく普通の原付バイクも小さいエンジンに無理をさせているためけっこうウルサイ音が出ます。しかも排気量の小さいオートバイは台数が多いのであちこちで耳につきます。仕事で乗っている新聞配達の人や郵便屋さんに対してさえ、うるさいなあと思うことがあります。ましてや、大学のキャンパス内の通行禁止区間を走るオートバイには怒りを感じます。

 私が徒歩通勤に使う、車の通らない細い道もオートバイは走ります。坂道で追い越されると排気ガスをもろにあびさせられ、本当に腹が立ちます。同じ坂道を、腰を持ち上げてがんばって追い越している自転車がほほえましいのとは好対照です。同じ排気ガスでも、オートバイの排気ガスのほうが車の排気ガスよりも臭いような気がしていましたが、事実、オートバイのほうが基準が倍以上も緩やかなんだそうです。オートバイはもともと車よりも排気量が小さく、台数そのものも車より少ないため、お目こぼしをいただいているんだとか(本書p.209による)。

 オートバイから連想される「野性派」「アウトドア派」というのも、徒歩で山歩きをする人やサイクリングをする人に比べるとなんか中途半端でウソっぽい感じがします。四駆車で海岸を走り回るヤツラとイメージが重なる感じがしてしまうのです。

 「ジーンズのポケットに文庫本を忍ばせオートバイで旅に出る」なんていうのが、角川文庫のセールスコピーかなんかにありそうですが、実際にはオートバイに乗るような人はあまり読書をするタイプには思えません。だって、オートバイで高原に出かけて木陰で読書をするくらいなら、私のようなタイプは最初から家で読書をしているほうがいいと考えるでしょうから。

 とまあ、オートバイの悪口はどんどん思いつくのですが、こんな私でさえ、この本を読んで、オートバイに対する認識が少し変わりました。オートバイに乗る人が、みんな斎藤さんのようだったら、世間のオートバイに対する評価も大きく変わるでしょう。    (守 一雄)


【これは絶対面白い】

斎藤純『オートバイライフ』

文春新書\710


 オートバイとオートバイ乗りに対する私のイメージを大きく変えた本。よく考えてみると、この本はオートバイの本ではなく、たまたま『オートバイライフ』というタイトルが付いているだけの「大人の生き方への提言」の本なのである。たくさんの本が紹介されている読書案内の本でもある。              (守 一雄)


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