毎月1日発行[発行責任者:守 一雄]
(kazmori@gipnc.shinshu-u.ac.jp)
「授業づくりのヒント」というと、ゲームを取り入れたり、グループ学習をさせたりといった授業形態に関心が向けられがちだが、それは子どもたちの学習意欲を高めるための補助的な手段にすぎない。どんな工夫をすれば「子どもたちが授業に参加してくれるか」ではなく、「子どもたちが理解できるようになるか、知識を深められるか」が本当の「授業づくり」であるはずである。知識をいかに与え、いかに組み替えるかが重要なのである。この本では、「理解や知識を深めるためのヒント」が紹介されているのだ。
子どもたちに「興味・関心・意欲」を持たせるためには、知識こそが大事なのだ、というこうした主張を前面に押し出した書名を付けたのが、『いじめられた知識からのメッセージ』である。世間では、「知識重視の教育を改めて、学校をもっと楽しいところにしよう」という主張がなされることが多い。学校教育の問題点の多くが「詰め込み教育」や「知識偏重」など、「知識」のせいにされ、「知識」が悪者にされいじめられている。しかし、この本の著者たちは、“ホントは知識が「興味・関心・意欲」を生み出す”のだということをいろいろな事例を紹介しながら繰り返し述べるのだ。これこそが、「いじめられた知識からのメッセージ」である。
「知識が感動を生む」という著者らの主張もその通りだと思う。地球が太陽の周りを公転していることや太陽と地球との距離については知っていたが、この本を読んで、「はるかかなたに見える太陽のさらに先、ちょうど2倍の距離まで行ったところに、半年前にはこの地球があったのだ」ということに気づいたときには私もちょっと感動した。この地球は本当に宇宙を航海する「宇宙船地球号」なのだということも実感できた。
知識を得ることの楽しさを知ると、それを伝えることも楽しくなる。この本を読むと、教育実習が楽しみになり、きっと教師になる意欲も湧いてくるはずである。(守 一雄)