-2万年前からの便り-
野辺山高原の後期旧石器は、九州鹿児島湾の姶良カルデラの噴火によるAT火山灰(約2.5万年前)層より上層で発見されています。2.2万年前から1.2万年前までの1万年間の石器の変遷をたどると、次のような野辺山編年(堤1993)の組み立てが可能になります。
野辺山第U期 (2〜1.6万年前)
前半 発達した石刃技法とそれを素材とした優美なナイフ形石器の見られる時期
三沢遺跡や丘の公園第2遺跡がこの時期のもの。
後半 小形化・幾何形化したナイフ形石器や小形尖頭器が見られる時期
西の腰B遺跡などがこの時期のもの。
野辺山第V期 (1.6〜1.4万年前)
ナイフ形石器に代わり尖頭器が主体をなす時期
柏垂遺跡。東森遺跡など。
野辺山第W期 (1.4〜1.2万年前)
前半 矢出川技法などによる稜柱形細石刃石核などがみられる時期。
矢出川第T遺跡など。
後半 湧別技法など北の系譜をひく削片系細石刃石核がみられる時期。
中ッ原第5遺跡B地点・中ッ原第1遺跡G地点など
野辺山第X期 (1.2〜1万年前)
大形尖頭器・有茎尖頭器・局部磨製石斧などをもち、最古の土器を伴う時期。
立石A遺跡など。
* なお、この編年の年代観は加速器質量分析法など新しい14C年代測定法やその暦年換算などによって、さらに2〜3千年程度古くなる可能性があります。
野辺山の石器や編年についてさらに詳しくお知りになりたい方は、「遠き狩人たちの八ヶ岳」(堤1993)ご覧ください。
旧 石 器
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1万3千年ほど前のものとみられ、黒曜石で作られている。 |
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削片系細石刃石核とかクサビ形細石刃石核などと呼ばれるもので、北海道の湧別技法など北の系譜をひくものといわれている。 |
B 彫刻刀形石器・錐・削器・掻器:中ッ原第5遺跡B地点:野辺山第W期後半
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彫刻刀形石器は地元のチャートなどで作られており、荒屋型とされるものを含む。 |
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細石刃文化の大形の削器で、地元の石材である緑色チャートを用いている。 |
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礫器は木材の伐採・加工用といわれ、折断剥片は物を切ったり、皮などをなめすのに使われたらしい。 |
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1万3千年前の削片系細石刃石核で、八ヶ岳の灰色の黒曜石や赤灰色の黒曜石、NK産といわれる謎の産地の黒曜石で作られている。 |
F 細石刃・削器・掻器:中ッ原第1遺跡G地点:野辺山第W期後半
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黒曜石・緑色チャートなどで作られている。 |
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中ッ原5B地点の細石刃(マッチ棒の横の1点)には、刃に平行する細かな線状のキズが残されている (写真下2点)ことが、100倍の顕微鏡観察でわかり、使用痕と考えられた。 |
![]() さかいひろこ画 |
狩人が手にするのはナイフ形石器を先端につけた槍である。背景には八ヶ岳がそびえる。 |
I ナイフ形石器(左2点)・尖頭器 川上村誌より
J ナイフ形石器・尖頭器・掻器・彫刻刀形石器 川上村誌より