八ヶ岳黒曜石原産地:麦草峠露頭

 八ヶ岳には、標高2000mの麦草峠(八千穂村)や、冷山(つめたやま、茅野市)などに黒曜石の露頭が存在しています。野辺山の旧石器人は10kmほど離れた麦草峠などの黒曜石を手に入れ、ナイフ形石器や尖頭器・細石刃などを作りました。また、野辺山の旧石器人は八ヶ岳の黒曜石のみでなく、30kmとやや距離をへだてるもののさらに質の良い和田峠やおめぐら男女倉・霧ケ峰産の黒曜石なども用いて石器を作りました。

海を渡ってきた黒曜石


 神津島の黒曜石でできた細石刃石核(矢出川遺跡)
神津島 恩馳島 恩馳島の黒曜石の産状

 矢出川遺跡から出土した黒曜石細石刃石核を蛍光X線による産地分析をした結果、写真の5点が、はるか太平洋上に浮かぶ伊豆7島のひとつ神津島産の黒曜石でできていることが判明しました。この地域で八ヶ岳や和田峠の近場の黒曜石を利用していることはわかります。しかしなぜ、200kmもの距離をおいて、野辺山の地まで神津島の黒曜石が運ばれたのでしょう。当時は氷河期で100m以上の海面低下が起きていたとしても、神津島と本土は陸続きにはならず、舟でなくては渡れません。ここに最大のミステリーがあります。私たちの想像以上に,発達した社会的関係を旧石器人はもっていたのでしょうか。

謎の黒曜石原産地 "NK"

 神津島とならんでもうひとつ、黒曜石の謎が浮かんできました。それは黒曜石分析の結果、和田峠でも麦草峠でも神津島でもなく、日本中どこの黒曜石産地とも成分が一致しない謎の原産地の黒曜石がたくさんみつかったことです。
 この黒曜石は京都大学原子炉実験所の藁科哲男先生によって"NK産地"と仮に名付けられ、その場所をつきとめるための調査が八ヶ岳旧石器研究グループによりなされています。
 沼津高専の望月明彦先生の分析によるとNK産の黒曜石は最近静岡県沼津市の遺跡からも数点みつかっているということです。ただ、その分布量からすると野辺山周辺にかたよる傾向が顕著ですので、予測的には八ヶ岳周辺に人知れず存在した産地の可能性があるものとみられます。

中部・関東地方を中心とした黒曜石利用


 1,3万年前、細石刃文化の頃の黒曜石利用を地図状に示してあります。和田峠・霧ケ峰・男女倉・麦草峠などの信州系、神津島系、伊豆・箱根系などの黒曜石の動きがよくわかります。

    こうした黒曜石利用の状況をさらに詳しくお知りになりたい方へ

  沼津高専 望月黒曜石研究室   http://www.busitu.numazu-ct.ac.jp/mochizuki/home.htm
  島根県隠岐島 八幡黒曜石店   http://fish.miracle.ne.jp/koji/

  黒曜石のすばらしいナイフギャラリー

"ストーンナイフ"http://www14.plala.or.jp/stoneknife/index.html
  
です! h://www14.plala.or.jp/stoneknife/link.html    

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