■ 旧石器の基礎知識

旧石器時代の基礎知識をお知らせするミニ図鑑です。用語は逐次追加します。

★ 解説追加 2010年3月14日

■ 石器 編
■ ナイフ形石器 (ないふがたせっき) (Backed blade)

剥片の鋭い縁辺を一部に残し、それ以外の縁辺に急斜度調整(ブランティング)
を施した石器。
日本列島の後期旧石器時代を代表する器種。
台形様石器の消滅した後期旧石器時代前半期の後葉から
細石刃の登場する直前の後半期の中葉にかけてみられる。
杉久保型・茂呂型・国府型などがある。

槍先につけられ、狩猟具とされたもの、手にもってナイフとされたものなどがある。

写真は、神奈川県栗原中丸遺跡のナイフ形石器
後半期中葉のもの。撮影:堤
■ 尖頭器 (せんとうき) (Point)

先端を、加工によって鋭く尖らせた石器。
両面加工(写真)・片面加工・周縁加工などがある。
後期旧石器時代後半期に登場する石器で、縄文草創期までみられる。
槍先形尖頭器と呼ばれることもある。

幅広の木葉形尖頭器(もくようけい)、細身の柳葉形尖頭器(りゅうようけい)がある。
槍先につけられ、狩猟具とされたもの、手にもって削り具とされたものがある。

写真は、長野県川上村馬場平遺跡の尖頭器
■ 細石刃 (さいせきじん) (Micro blade)

幅1センチ以下、両側縁が平行するカミソリの刃のようなミニ石器。
細石刃技法によって生産された。
ナイフ形石器消滅の後、後期旧石器時代終末期に登場し、
九州では縄文草創期まで作られた。
湧別技法、矢出川技法、ホロカ技法、畦原技法など固有な製作技法がある。

槍先の側刃とされたり、ナイフの刃などになったものとみられる。

写真は、長野県中ッ原5B遺跡の細石刃
湧別技法で製作されたもの。
■ 細石刃石核 (さいせきじんせきかく) (Microblade core)

細石刃を剥ぎ取る母体(核)となったもの。
湧別技法、矢出川技法、ホロカ技法、畦原技法など固有な製作技法がある。

写真は、両面体を製作し、削片を剥離して、クサビ形の細石刃石核を準備し、
その一端で細石刃を剥離した湧別技法の細石刃石核。
八ケ岳産の黒曜石を用いている。

長野県中ッ原5B遺跡出土
■  (きり) (Driil)

剥片の端部を加工し、尖らせた石器。
文字通り、穿孔に使われたのだろう。
後期旧石器時代の全般にわたってみられる。

写真は、長野県中ッ原5B遺跡の細石刃石器群に伴う錐。
下端が穿孔に使われた。石材は緑色チャート。
■ 敲石 (たたきいし) (Hammerstone)

円礫を未加工で用い、石器製作の際、石の打ち割りに用いたもの。
後期旧石器時代全般にみられる。

写真は、長野県中ッ原1G遺跡の敲石。
剥片剥離の際に用いたのだろう。
その先端にはアバタ状の敲き痕がみえる。
■ 局部磨製石斧 (きょくぶませいせきふ) (Edge-ground axe)

素材を撥形に加工し、研磨によって刃部を作り出した石器。
後期旧石器時代初頭に特徴的に存在し、環状ブロック群などから出土する。
旧石器時代に磨製石器はないされてきたが、日本列島では900点近い数が発見されている。


写真は長野県日向林B遺跡出土。撮影:堤

■ 削器 (さっき) (Side scraper)

剥片の側縁を加工し、刃をつけた石器。
刃が、外湾するもの、内湾するもの、直線的なものなどがある。
後期旧石器時代全般にみられる。

写真は、長野県中ッ原5B遺跡の削器。
左サイドに直線的な加工が施される。
石材は緑色チャート。
■ 掻器 (そうき) (End scraper)

剥片の端部を加工し、円形の刃をつけた石器。
円形のもの、石刃の末端に刃をつけたもの、拇指状のものなどがある。
後期旧石器時代の初頭以降にみられる。

写真は、長野県中ッ原6遺跡の掻器。
石刃の末端に刃をつけたもの。
石材は水晶。
写真:滋澤雅人氏
■ 遺跡・遺構 編
■ 石器ブロック  (Concentration)

石器集中地点。
石器が集中して出土する地点。石器集中区、石器ユニットと呼ばれることもある。
製作後石器のクズが置き去りにされたり、まとめて捨てられたり、置かれたりした場所。

写真は、大阪府翠鳥園遺跡の石器ブロック (撮影:堤)
■ 石器製作技法
■ 直接打法  (Direct percussion)

石器に直接ハンマーを打ちつけ、剥離を行う方法。
旧石器時代全般にわたって行われた基本的な石器製作方法。
ハンマーには、硬質ハンマー(石)と軟質ハンマー(角・木)を用いる場合がある。

写真は、北海道白滝産の黒曜石と川原石のハンマー(撮影:堤)
■ 間接打法  (Indirect percussion)

石器にパンチ(たがね)をあて、そのタガネをハンマーで叩いて
間接的に剥離を行う方法。
旧石器時代ではパンチの出土例がなく、この技法があったかどうかは不明。

写真は、北海道白滝産の黒曜石と鹿角のパンチ、木のハンマー(撮影:堤)
■ 押圧剥離  (Pressure flaking)

押圧剥離(おおあつはくり)は、石器に押圧剥離具をあて、圧力をかけて剥離を行う方法。
写真は鹿角を用い、その先端部を石核の端に当て、加圧しているところ。
手の中での石核の固定には、樫の木のホルダーを用いている。

細石刃剥離や、有茎尖頭器の並行剥離に用いられる。よく細石刃は押圧剥離でなくとも
剥がせるという話を聞くが、1点や2点ならうまくいけば可能だが、企画性のある細石刃を
連続して大量に剥がすのには押圧剥離でないと困難である。