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(1999/6/13)

「ゲテモノ趣味」


(2000/1/23補足)
 悪趣味をバッドテイストと言い替えれば、格好いいものとして世の中に通用するのだから、日本人は単純というかカタカナコンプレックスというか。明治時代からなにも変わってないのね。
 アニメも特撮もマンガも「おしゃれ」さを前面に出した最近の新作。万人には受け入れられやすいが、結局ヒットソングと同じで「1ヶ月話題に上ってそれでおしまい」な使い捨て作品に堕落しているのかも。
 クセがあるが魅力も大きい作品。求めてさ迷うオタクの業。
 世の中には二種類の人間がいる。本当においしいものを食べて喜ぶ人間と、本当に不味いものを食べて喜ぶ人間である。そして、世の中の料理はおいしいものとまずいものと、それ以外のものに判れることも事実なのである。

 一般的には、おいしいものを食べるのが好きな人間が「まとも」であり、不味いものを求める人間は「へんな」やつと捉えられるらしい。変な話しだよね。どちらも、食品を口に入れることによってその食品の持つ特定の化学物質で味覚を刺激し、それが脳細胞を刺激させて結果的に満足感を得るという、過程も結果も全く一致している行為なのに、どうして刺激の「もと」によって対極の評価を下されてしまうのか。

 ま、答えは簡単ですな。不味いものが好きなのは「悪趣味」だから。
 ここで、悪趣味とは何かとか言いはじめると、社会的に広く認知されていないとか、いや、大衆とは心が移ろいやすく結局大勢の意見を「正しい」と認めるものだとか話しが暴走して、結局収拾がつかない、いや、ついたところで意味のない議論になるんでしません。早い話が「一般的な意見」という、マスメディアによって支配されていて大部分の人間がそれに躍らされているものから外れているものが「悪趣味」であると、その程度の認識と思ってもらいたいココロ。

 しかし、悪趣味が、ゲテモノが好きな人間も多いんだよね。私もだけど。
 なぜそんな物が好きなのかって?そんなの、面白いからに決まってるじゃない。笑いというものが、日常や現実からのずれを表現することによって成り立つのであれば、ゲテモノとは存在それ自体が笑いとなっても、何の不思議も無い。突拍子もない発想、そしてそれを現実のものとして存在させようとする試み、そしてそれを実現させてしまう能力。それらの全ては面白くて、そして其れを平気で受け入れることが出来る自分も面白くて、そして大好きなのである。

 さて、唐突に話を飛ばして本題。おたく・マニアとカルトを分けるボーダーラインは、案外「ゲテモノ」か「人畜無害」かにあるんではないかなと言うのが、最近になって思うところ。

 ○○駅前から歩いて10分、ちょっと路地の奥まったところにあるバー、いや、正確にはクラブといった雰囲気なんだけどね、そこの品揃えはただ者じゃないんだ。‥‥などと言ってるのがカルト。第10話の作画って、コンテが○○さんでさ、作監が○○さんなんだよ。もう最強のコンビだよね。‥‥などと言っているのがおたく。形而的に見れば両方とも同じなんだよね。なにかについてより深い知識を求めるのは、人間が人間たるゆえに絶対的に持っている、言わば本能、知識欲であるし、それを披露することで他人の注目と尊敬を得たいという名誉欲、同じ分野の知識を持つもの同士で知識の交換をしたり時には議論を行う楽しみもあるし。

 しかし、その対象が一般的なものかそうでないかによって、ある者は尊敬され、ある者は時に異常なまでの嫌悪を抱かれたりする。
 ま、その嫌悪感すら、ある意味心地いい刺激として感じてしまう所が、ゲテモノ趣味の人間なんだけどね。それに耐えられない人間は、自分は興味が無いのに、一般的に受け入れられている分野に転換していき、ある人は成功し、ある人は挫折していくのだけど、まぁそれは別の話し。

 思えば、あの一時代を作った「新世紀エヴァンゲリオン」。あれも思い返せばゲテモノ、悪趣味の典型だったものな。「メカニカル」とはほど遠い、生物的しかもグロテスクなメカデザイン、どう分析しようとも決して解けない伏線や数々の設定。そして、「ライブ感覚」「監督の私小説」だの、どう聞いても時間がなくてしかも自分の張った伏線を解決出来ない言い訳にしか聞こえないインタビューを大真面目に分析したり、それでストーリーを解釈しようとして様々な議論が繰り返えす様。元々、あの監督は(以下、個人攻撃に成りそうなので削除)だから、それ自体が悪趣味なんだけど。
 結局、エヴァは本編の悪趣味さがウケて、というか悪趣味好きが飛びついたというかなんだけど、そのブームはグッズやアイテムのコレクションへと変貌し、そのゲテモノ感覚が薄まっていってブームが終焉したわけだけど、それは当然の帰結ですな。

 おたくは悪趣味が好きなのか、それとも悪趣味だからおたくと呼ばれるのか。メッコールを片手に、決して解けない命題に取り組みながら夏の一夜を過ごすのもまた一興。