マサラムービー

現在のインドには衛星放送もあるようですが、一般大衆の娯楽といえば今でも ヤッパリ映画。(たぶん)インド映画界での有名人といえば、日本でまず名前の挙がるのが 、サタジット・レイ監督。でも、はっきり言ってこのような重厚な芸術作品は邪道です。

インド映画の神髄は、ヒーローとヒロインの恋愛を中心に、笑いあり、涙あり 、アクションあり、スリルありのごっだまぜ、ところどころに脈絡のない華麗な 歌と踊りをおりまぜて、最後はもちろんお約束のハッピーエンド。こんなC級大 作定番ドラマを称して、最近はマサラムービーというそうです。

最近、インド映画祭関連の映画会社の仕込みのせいか、新聞にインド映画の記 事が良く載ります。「ムトゥ踊るマハラジャ」の映画評は同じ日に朝日と読売で 載っていました。たまたま東京出張の機会があったので見てこようと思ったら、 上司に夜を誘われて機会を逃してしまいました。今度ビデオ化されないでしょう か。
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ともあれ、ひりひりカラカラのインド料理が病み付きになるように、マサラム ービーも一度見たらハマルこと請け合い。(もしくは、あまりのばかばかしさに 途中で席をけるでしょう。)この夏はインド映画が相次いで公開されるようです 。ぜひご覧になってはいかがでしょうか。
「ムトゥ踊るマハラジャ」−渋谷のシネマライズ → Part 2 「手ぬぐいを武器にする男」編へ
「ボンベイ」−銀座テアトル西友
インド映画祭−7月29日から。赤坂の国際交流フォーラムでシャー・ルク・カ ーン主演作など12本
アジアフォーカス福岡映画祭−9月。インド映画4本の上映を予定

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アイドル紹介


私はインドに行った際に、一人の男優のファンになった。名前はアミターブ・ バッチャン。町のポスター売り屋でA1版程度のポスターを何枚も買ってきて、宝 物としていた。彼は70-80年代を代表する国民的大スターで、その人気を当て込 んだ当時の与党インド国民会議派にかつがれて国会議員にもなった。通称「Big B 」。昔、NHKでも海外制作の彼の特集番組を放送していたが、人物的にも優れ た好人物。(らしい)彼の存在は別格で、人気ナンバー2の男優がこう嘆いたと いう。「俺はナンバー10だ。だって、ナンバー1からナンバー9までをアミターブ が独占しているんだからな。」

私の見た映画は、「SHAHENSHAH」。その映画の中でのアミターブは、復讐に燃 える元刑事。悪い奴等をバッタバッタとなぎ倒し、その合間に美しいヒロインと 踊りまくる。最後は過去の汚名を晴らしてヒロインとハッピーエンド(といった 感じ)。
ただし、人の好みはうつろいやすく、私が彼を知った87年は彼の晩年ともいえ る時期だったらしい。国会議員からの復帰作であった、SHAHENSHAH以後、彼の人 気は急落し、復活することはなかったという。(もちろん、今も頑張っているら しいが。)そこらへんの情報はリンク集で紹介した他のHPで詳しいものがある。

インドで偶然手にした雑誌「India Today」にアミターブの記事が載っていた のでここに転載する。アミターブの凋落を予言しているようで興味深い。

SHAHENSHAH - Return of the Hero
アミターブが劇的なカムバックを果たす

最初に手紙が来た「警告する。もしSHAHENSHAHを上映するならば、お前の映画 館に火を放つ」次いで、電話が来た「我々の警告を聞き入れなかった場合には、 重大な結果を招く」SHAHENSHAHが封切りされた2月12日、全国250の映画館オーナ ーは自らの映画館を守るため、スタンガンを携帯した大勢の警官を従え、襲撃に 備えた。しかし、代わりにやってきたのは津波のような観客の群れだった。
人々の論争の的となったアミターブの復帰作は、前売りが従来の記録を大きく 破り、時には入場券売場の窓ガラスさえ破った。デリーの中心部にあるシエラ劇 場には、第1回目の上映を見ようとして、午前9時に2万人もの群衆が押し寄せた 。「今まで見たことのないような人手だ。これまでの最高よりも12倍くらい多い 」とオーナーのAjay Kaushishは言う。
封切り前にこれほどの話題を集めた映画は、恐らく他にないであろう。いくつ かの青年団体は、彼は堕落と腐敗の象徴であるとして、復帰作の上映を阻止する と宣言した。映画会社は非常に神経質になった。復帰作はこれほどの脅迫や期待 の中で成功することができるであろうか、と。監督のTinnu Anandは祈りながら 、インド全土でのSHAHENSHAHの封切りに踏みきった。奇妙なことに、最後の段階 でアミターブは長年持っていたボンベイ地方の配給権を手放した。
2月12日の果てしないような3時間半の間、全ての映画会社は息を止めて事態を 見守った。アミターブの復帰は人々に受け入れられるのか? 映画会社に報告が入 りはじめた。スクリーンにアミターブが現れるたびに観客の拍手が沸き、闇市場 でのチケットの値段は100ルピーかそれ以上に高騰した。貧乏人はこう言った。 「俺のリキシャーと交換でいいから、入場券をくれ」映画館のオーナーは証言す る。「普通の初日であれば、観客は気ままに歌を歌いながら出ていく。今回はだ れも席から立ち上がろうともしなかった。」
レンタルビデオ屋では、5日前の予約が必要とされた。ビデオの中に挿入され たCMには1分間で数十万ルピーの料金が請求されたといわれる。ヴァラナシでは 、日曜の朝7時に特別上映を行ったが、すぐに満員になった。「SHAHENSHAHと少 しでも関係のある人や物は金になる」EVENING NEWSのDalip Shandilは書いてい る。ボンベイフィルムの広報担当者ですら、驚きを隠せない。「Ladka hua hai( すごい!)」
でも、思い出してほしい。この映画は今までアミターブが演じてきたこと全て の焼き直しに過ぎない。大きな水差しに、Amrish Puri、Prem Chopra、Kader Khan 、Aruna Iraniを投げ込んで、いつもの香辛料を振りかけて、ことこと煮込ん で3 時間。ほら、このとうり、冗長で腹立たしい、いつもの味付けの映画のでき あがり。映画のメリットといえば、アミターブがスクリーンに登場するたびに、Bofors の亡霊が人々の頭から消え去ることである。観客はスイス銀行の一件と武器取 引とVinod Khannaのことを忘れ、映画に夢中になる。
とはいえ、1年半のブランクをものともせず、アミターブは今なおY1の映画ス ターであることを証明した。昼間は始終ガムを噛んでいる粗野な警官、そして夜 にはSHAHENSHAH。それが今回の彼の役どころだ。SHAHENSHAHはスーパーマンと幽 霊の合いの子のようであり、服装はマイケル・ジャクソンを思い起こさせる。大 またで歩く大男は密輸業者や組織的な誘拐団を叩きのめす。また彼は超人的な力 を備え、特急列車でさえも彼を傷つけることができない。最後には、トラックで 法廷に乗り込み、悪党をその場でつるし首にする。
SHAHENSHAHは贅を尽くして制作された映画である。JKという悪役が印象的な場 面で登場する。アミターブが水攻めから脱出してJKの応接間へ出てくる、JKを演 じるのはあのAmrish Puriである。ヒロインはMeenakshi Seshadri、新鮮ですら りと伸びた足が印象的である。彼女はスラムに暮らしているが、ピエール・カル ダン作のような衣装を身にまとう。
SHAHENSHAHは彼自身が法律で、裁判所や警察をも超越した存在である。「2つ の法律があってはならない」彼はどんな社会派の政治家よりも暖かい口調で言う 。「つまり、富める者と貧しき者とで異なる2つの法律が」
彼は過去にそうであったように、今でもスーパースターだ。人々は彼を愛して いる。彼は大衆の中から成功した人であり、大金持ちになり美人の妻を娶った今 でも、自分の出自を忘れない。「他に何を望むのか」彼の映画の大手配給元であ る、Raj Chopraは尋ねる。「彼は日常の憂さを忘れさせてくれるではないか」「 反対する者が何を言おうとも、彼は依然としてナンバーワンであることを証明し た」この映画を製作したSidheshwar Dayalはいう。
SHAHENSHAHの中ではコメディーや悲劇、アクションといった彼のいくつもの面 を見ることができる。彼は、髪に油を付け、口からパーンを垂らし、みっともな いような服を着て、だらしなく腰を振り、嫌らしく振る舞ってもなお、人々に愛 される唯一のヒンディー映画スターである。初期の映画では、彼は悪を打ち負か す一匹狼を演じてきた。それでも彼は親しみやすく、特別な存在である。彼は長 い間ファンや一般の人々にそう思われてきた。
この最大のスターは何人かの経済状況さえ一変させた。監督のAnandは数か月 前はほとんど破産状態だった。映画の製作者たちも不況に苦しんでいた。だが、 この映画で人々はまた映画館に足を運ぶようになった。「この映画は映画界の救 いとなるだろう」Dayalは言う。「最終的には他の映画を救う映画になるはずだ 」
Prakash MehraやYash Chopraといった監督たちは息を吹き返すことができる。 これまで、アミターブを使った映画は全てヒットし、彼を使わなかった映画は失 敗していたからだ。しかし、数少ない彼のライバルたちは平静を装う。彼の復帰 を横目に見ながら、Jackie SharoffやDharmendra、Mithun Chakrabortyといった スターたちは自らの主演映画の製作にとりかかっている。「しかし、SHAHENSHAH に一番衝撃を受けているのは、」Raj Chopraは説明する「たぶん、V. P. Singh だ」
観客が減った時にこの映画が最終的に何を成し遂げるかを予言するには早過ぎ る。表面的にはこれはヒットだ、が、映画の成功は最終的にペイするかどうかで ある。その点はほどなくして明らかになるであろうが、少なくともこの映画が高 くつくものになることは疑いない。配給者は全国の5地域で900万ルピーづつを売 り上げる必要がある。しかし、映画の成功の報酬はまずアミターブに与えられる 。プロデューサーたちは蜂のように先を争って彼に群がっており、既に知られて いるように先月12本の出演契約に彼はサインをした。しかし、彼ももう若くなく 、衰えの兆候を隠せない。彼のカリスマ性も永遠には続かないだろう。「彼も自 然界の法則には逆らえない。」Chopraはいう。悲しいかな、Amitabh Bachchanで も勝つことのできない戦いがそこにある。