『銀河英雄伝説』のキャラクターについて(1)

 

 『銀河英雄伝説』で良く質問を受けるのはキャラクターについてですので、一度書き留めておこうかと思います。

 路線として「美形キャラ」には違いないのですが、いわゆる「売れ線」を狙った「アニメアニメした」キャラクターにしなかったつもりです。

 そうした方向性を打ち出したのにはいくつか理由があります。

 まず、『銀河英雄伝説』のキャラクターは「ものを考えるキャラクター」だということです。
 動物の赤ん坊がかわいく見えるのは目が大きいからだといわれています。記号論的に目の大きいキャラクターはかわいく見せやすいので、大概のアニメのキャラクターは「安易に」目が大きいのですが、どうも目が大きいキャラクターを見ると頭の容積の中を目が大きく占めてしまって、脳が入っている気がしません。(道理で何も考えていないようなキャラクターばかりが跋扈しています)
 『銀河英雄伝説』のキャラクターはそういう感じにしたくなかったのです。 また、『銀河英雄伝説』は当初からいずれは海外にも送り出したいと思っていました。昨今の「ジャパニメーション・ブーム」とやらで、最近は海外でも日本の「アニメアニメした」目のバカでかいキャラクターも大手を振って罷り通っているようですが、ちょっと前まで海外ではあの手のキャラは「気持ち悪い」と言われていたものです。

 そんなこんなも踏まえて、基本的に「骨格」を意識した「美形」という路線を採りました。

 それは芝居も含めて「リアル志向」ということです。演出的にも「洋画の実写のような感覚」を目指してもらいました。地に足をつけた演出と言ってもいいかもしれません。世界設定が「SF」ですから、何でもありなのですが、そうやってしまえば荒唐無稽になり、『銀河英雄伝説』が持っているテーマ性を壊してしまうと考えたからです。第2期のオープニングに掲げた『時は移り、処は変われど、人類の営みに何ら変わる事はない』というのが基本姿勢です。大きな虚構を成立させるためには地道な真実を積み重ねていかなければいけないのです。
 それは全体に地味な印象を与えかねないのですが、結果的に「流行り」を追わず、「子供だまし」や「虚仮脅し」を極力廃したことが、息の長い作品になり得たのではないかと思っています。
基本的に「大人の」鑑賞に堪える作品を作ろう、そう思っていました。キャラクターのデザインの方向性もそうした方針に則ったものだということなのです。

 そういう方針の下、起用したのが奥田万つ里さんです。その前に関わった仕事でどういう絵柄を描かれる方か承知していましたので、この作品にはピッタリだと思いました。本質的にデッサンが確かで、なおかつ少女マンガ的美形キャラへの志向性もあり、何よりキャラクターに陰影というか内面性のようなものが感じられるのが素晴らしいと思っていました。
 実際、ラインハルトとヤンは殆ど何も注文を出さず、キャラクターの説明だけで一発で決定稿が出ています。(因みにラインハルトは最初「皇帝」となった時のキャラクター=本伝3期途中からの髪の長いキャラが最初に描かれ、それを若くするという作業で当初のキャラクターが作られましたが)
因みに脚本の首藤さんは「ヤンってこんなにいい男かぁ?」と首を捻っていました。もっと情けないキャラかと思っておられたようで………(苦笑)
 その他のキャラクターも殆ど1稿でOKが出ています。キルヒアイスが特徴を掴みにくくて数稿したのと、ミッターマイヤーが当初老け気味だったのを若くしたぐらいです。(図1)

 

 

 

 

 ちょっと面白いのはロイエンタールで、一旦決定稿が出ていたのですが、(図2)奥田さん本人が納得いかなかったようで自発的に再考して来たのが今のキャラです。最初のキャラクターも没にするのは勿体なかったのでフェルナーとして陽の目を見ました)

 

 他にプレゼンテーションの段階から、実際の制作の段階で多少変わったキャラはいます。

アッテンボローは最初もっとやんちゃな感じのキャラでしたし、(図4)

ポプランは逆にもっとシャープな感じでした。(図5)

メックリンガーも髪型が変わっています。(図6)

 


 

 その他、『わが征くは星の大海』には出ていないキャラクターで、
プレゼンテーションの段階で作ってあって、本編でもそのまま登場しているものもかなりあります。ユリアン、ヒルダ、フレデリカ、ジェシカ、シェーンコップ、ケンプ、キャゼルヌ一家、シトレ、ビッテンフェルト、カリン、ドミニク、ケッセルリンク、メルカッツ、ルビンスキー………などなどです。オーベルシュタインの犬ってのもありました(笑)

 それはともかく『わが征くは星の大海』終了後、シリーズ化が決まった段階で困ったことになりました。他の作品と重なって、奥田さんが降りてしまったことです。
 その後の悪戦苦闘は………(2)へつづく

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