16.その人の大切なものを大切にする


人々の「思い」を大切にする市長でありたいと思います。

少し前から私の心の中に芽生えた言葉です。
人にはそれぞれ違った経験がありますので、自ずと考え方や判断、嗜好も異なります。

71年前、日本は太平洋戦争の終戦を迎えました。
今の佐久市にあたるエリアの戦没者は、2769柱に上ります。
国家、故郷、家族のために自らを盾として戦禍に散った方々です。
その英霊を慰めるため、佐久市では毎年戦没者追悼式を行っています。

戦争未亡人となった女性や父を亡くした子供たちも高齢者になっています。
遺族の皆さんにとっては、今なお、悲しみの中にあり、亡き最愛の方との関係は何にも勝る大切なものなのだと思います。
そんな思いを及ばぬとは言え理解しようと追悼式に臨んでいます。


佐久市は今、小中学校の整備を集中的に行い、その終盤に差し掛かっています。

整備を進める中、泉小学校の改築が始まろうとしていたときのことです、「○○学校のような改築だけはしないで欲しい」と懇願されました。
現在、佐久市が進める校舎改築は、望ましい教育環境、財政状況、将来見通しなどを総合的に判断して行っており、必要なことだと考えます。

しかし、その方の真意は、「校舎を新たに建設することは望んでいる。しかし、思い出は、どうするのか…校舎がなくなり思い出を刻めるのは大木や碑など限られたものなのに…それすらも工事の都合で奪われてしまった学校は悲しすぎる」ということだったのでしょう。

以来、卒業生や親、先生にとって思い出を刻んでいる大切なものをできる限り残すよう努めています。
泉小学校の片隅には開校当時からある「泉小学校」の命名の由来にもなった井戸を保存することとしました。

人には誰しも、大切なことやものや時があります。
それらをともに大切にしていく社会を私は望んでいます。
大人から見れば首を傾げてしまうようなことでも、子どもにとっては大切なものがあります。
大人として親として、その大切なものを一緒に大切にしていきたいと思います。
そして、その理解から生み出される新たな大切な関係があると思っています。

市長としても親としても『その人の大切なものを大切にする』存在でありたいと思います。


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