お盆行事とはなんだろう
 私たちは、普段、正月休みや、お盆休みを年中の休息の日として自然に受け入れ、ふるさとを離れて働く人たちは、正月やお盆に帰郷することを楽しみにしています。
 働き過ぎといわれる日本人も、お盆と正月だけは仕事から離れて、日頃、ごぶさたしている親族や親しい知人、世話になっている近隣の人たちに挨拶し、また、仏壇や、神棚を磨いて祈り、特にお盆には、なによりもお墓まいりをいたします。
 これほど、なにげなく、習慣として受け入れている休みの日々には、どんな意味があるのでしょうか。
 お盆の行事も、正月行事同様、地域ごとに違ってきますが、その意味においては、それほど違いがありません。
  ふつう、お盆行事(まつり)は、祖霊がお盆の期間だけ家に帰って家族ともども過ごし、再びあの世に旅立つまでの間の行事(まつり)とされています。
 お盆行事(まつり)には、三つの要素があります。
  1 祖霊まつり (死者祭祀)
  2 豊穣まつり (穀霊まつり)
  3 魂まつり (生命の更新)
 この三つの要素がつながりあるものとして受け取られてきたのが、日本人の古くからお盆行事(まつり)に対する考え方だったのです。

盆と正月

 かつて、年の始まりには、二つの考え方がありました。
 一つは稲作を中心としたもので、正月を年の初めとするものです。歳神を迎えて米などの穀物をささげ、新年の豊穣を祈ります。
 もう一つは、蕎麦や芋などの畑作を中心としたもので、旧暦七月のお盆の時期が年の初めとも考えられてきたといわれています。お盆に喬麦や芋を供物としてささげる習慣が残ってますし、芋正月といった言葉もあります。
 この二つの豊穣を祈るまつりと、祖霊を迎え祀るまつりとは重ね合わされていました。豊穣をもたらす神は、すなわち祖霊でもあったのです。
 これらは、なぜ一体のものとして考えられたのでしょうか。
 先祖の霊は神となって、子孫のために作物が豊かに稔ることを見守ってくれる。だから、作物がとれたら、それを供物として祖霊神にささげ、共によろこびをわかちあって、これを共食し、新しい年の豊穣を祈る。豊穣を祈るまつりは、そのまま祖霊を祀ることになるというのが、一番分かりやすい解釈です。
 食物が新たに稔るのを祈ることと、神や祖霊を迎え、共に過ごすことを、一つのことのように過ごしてきた昔の人々の姿が、年中の祭礼のなかに生きてきたのです。