特別展「日本列島のヘラジカ化石」
【会期】 2009年 7月18日(土)〜11月29日(日)
【会場】 野尻湖ナウマンゾウ博物館3階 特別展示室
野尻湖で国内最古のヘラジカ化石が発見!
2008年に行われた第17次野尻湖発掘で、ヘラジカ化石が発見(写真)されました。野尻湖でははじめての産出です。みつかった地層は立が鼻砂部層のT3という地層で、およそ4.1万年まえのものです。いままでで日本から見つかっているヘラジカ化石では最も古い時代になります。ヘラジカは寒い気候を好む動物ですので、この時代が氷河時代の中でもとくに寒かったのかどうか、今後検討していくことになるかと思います。新しい種類の化石がみつかったことで、今後の発掘の楽しみが増えました。第18次発掘は来年の3月に行う予定です。
ヘラジカの化石は、日本からいままでに5例の産出記録があります。岩手県の花泉遺跡と風穴洞穴遺跡、神奈川県海老名、岐阜県熊石洞、横浜市の5か所です。このうち横浜市のものは、化石ではなく人為的にもちこまれた可能性が高いと言われています。第17次野尻湖発掘(2008年)において、野尻湖でははじめてヘラジカの化石が確認されました。この機会に、日本からみつかっているヘラジカ化石および現生の骨の資料を展示して、ヘラジカ化石のもつ意味について紹介するために、特別展を開催することになりました。展示内容について簡単に紹介しましょう。
ヘラジカについて
ヘラジカ、偶蹄ロシカ科ヘラジカ属に属するシカのなかまです。すんでいるところは、ヨーロッパ北部、シベリア東部、中国北東部、モンゴル、アメリカ合衆国東部、アラスカ、カナダなどです。北海道より北の地域の、おもに針葉樹林に生息していますが、極端に寒い地域にはすんでいません。体の長さは2.5~3mもあり、肩までの高さが1.5~2.6m、体重が200~800kgもある、かなり大きなシカです。オスには角があって、この角に特徴があります。手のひらをひろげたような大きな角で、左右をひろげると2mにも達します。針葉樹林や針葉樹と落葉樹の混合林に生息し、ひらけたところにはいません。夏には湖や川ですごし、冬の雪の多いときなどには森の中にかくれてすごします。ほとんど大きな群れをつくりませんが、冬には10頭前後の群れをつくります。草食性で、イネ科の植物や水草などを好み、湿地に生活しています。冬には雪の中から突き出た本の枝などを食べています。オオカミやトラ、ヒグマなどに襲われることも多いですが、最も嫌がるのが蚊やブユ、ハエなどの吸血昆虫で、幼虫が鼻からはいって窒息することもあるといいます。こうした寄生虫から身をまもるために、沼や池の水辺の生活を好んでいます。
ヘラジカ化石がみつかっているところ
- 岩手県花泉遺跡 山石手県一関市花泉町にある遺跡です。昭和2年に丼戸をほったところ多くの化石が産出し、その後昭和28年から数回の発掘が実施されました。このときにヘラジカをはじめ、ナウマンゾウ、オオツノジカ、ハナイズミモリウシなどが見つかり、骨を加工したといわれている資料も産出しています。ヘラジカは左右の下顎骨でほぼ完全な状態で産出しました。およそ1.6万年から3.5万年前の年代値が報告されています。
- 岩手県風穴洞穴遺跡 山石手県花巻市大迫町にある洞穴遺跡で、1996年から1998年に行われた発掘によって、4層という地層からヘラジカの化石がみつかりました。およそ1.8万年前という年代値が得られています。
- 神奈川県海老名市 明治41年に発生した洪水の堆積層からみつかったもので、相模川の河床を発掘して得られたものです。
- 横浜市 昭和2年に当時の横浜市南区太田町富士見耕地から発見されたヘラジカの角です。大変大きくりっぱなものです。細部の組織構造まで保存されているため化石とは考えにくく、人為的にもちこまれたものではないか、といわれています。
- 岐阜県熊石洞 岐阜県郡上市八幡町にある洞窟で、1964年以降発掘がおこわれており、ヘラジカのほか、ナウマンゾウやオオツノジカなどの多くの哺乳動物化石を産出しています。このほかにも現生のヘラジカの骨の標本を展示する予定です。ヘラジカ化石が教えてくれる氷河時代の環境とはどのようなものだったのでしょうか。今後の研究に期待したいところです。