乗暇岳落石、中学生4人重軽傷

松本・清水中の集団登山

信濃毎日新聞 掲載

平成17年10月7日(金)


 六日午後零時半ごろ、長野と岐阜県境の北アルプス乗鞍岳・剣ケ峰(標高三、〇二六b)頂上付近で、登山道を擦れ違うように上り下りしていた松本市清水中学校二年生の集団に、直径一・五bほどの岩が落ちてきた。
落石を受けた同市県、下平友理さん(13)が右足太ももの骨を折り、同市蟻ケ崎、小岩井悠太君(14)が頭を強く打ってともに重傷。ほかに男女各一人の生徒が足を擦るなどの軽いけがをした。

 引率教員が現場から携帯電話で松本広域消防局に通報。下平さんと軽傷の二人は県警と県のヘリコブターで松本市内の病院に運ばれた。小岩井君はほかの生徒たちと自力で下山後、不調を訴えて東筑摩郡波田町内の病院に運ばれた。

 松本署の調べによると、事故発生時、清水中の二年生百四十人と教職員十人が、剣ケ峰の頂上付近にあるつづら折りの登山道を連なって歩いていた。落石は頂上から二十bほど下った場所で起きた。

 清水中によると、一行は六日朝、日帰りの日程で学校をバス四台で出発。岐阜県高山市丹生川町の畳平から徒歩で乗鞍岳最高峰の剣ケ峰に登っていた。けが人以外の生徒たちは畳平に下山後、同日午後六時すぎ、学校に帰着した。同署は、登山時の安全管理に間題がなかったかどうか、学校側に事情を聴く方針だ。

写真:落石箏故があった乗鞍岳の剣ケ峰(手前の峰・3,026b)。○印が現場、右下の建物は頂上小屋=6日午後(県警提供)

一過去10年間の県内の主な落石事故一

1997年7月

北アルプス白馬大雪渓で栃木県の主婦(37)が頭に直径約1bの落石を受け死亡

1998年8月

北ア・涸沢岳直下で愛知県の男性(31)が落石に遭い約150b滑落、死亡

1999年8月

北ア・白馬大雪渓で福島県の女性(72)が左わき腹に直径30aほどの落石を受け死亡

2001年7月

北ア・白馬大雪渓で東京都と大阪府の女性2人が直径40-50aの落石を受け骨折の大けが

2002年7月

北ア・白馬大雪渓で奈良市の主婦(60)が腹や腰に直径約70aの落石を受け死亡

2003年8月

北ア・屏風岩を登っていた東京都内の女性2人が落石に遭い背中や肩を打撲、ヘリが救助

2003年9月

北ア・涸沢岳付近で大阪府の男性(69)が頭に落石を受け死亡同 北ア・涸沢から北穂高岳に向かう登山道で滋賀県の女性3人が落石を受け、打撲や切り傷などのけが

2505年8月

北ア・白馬大雪渓で土砂崩落、大阪府の男性(64)が死亡、ほか1人がけが

■過去に落宿事故なし 山岳関係者「なぜ」

 落石事故が起きた北アルプス乗鞍岳・剣ケ峰山頂直下の登山道は、やや急なこう配で周囲は岩場になっているものの、視界は開けた場所だ。山岳関係者は「これまで落石などの事故はなかったはずだ」と話し、原因を探りあぐねている。

 剣ケ峰の山頂から歩いて四十分ほど下った所にあり、事故に遭う前に清水中の生徒たちが休憩した「肩の小屋」の従業員男性によると、山頂付近の登山道で人が巻き込まれる落石は聞いたことがないという。山頂付近の天候は、事故前日までの二日間、風が強く小雨が降ったが、六日は朝から晴れていた。従業員は「天候が落石に影響したとは思えない」と話す。

 県山岳遭難防止対策協会講師の丸山晴弘さん(64)=長野市=は「現地は登山道も十分に整備され、(落石などの)危険性が高い場所ではない」と話す。ただ、周囲の岩場には不安定な浮き石もあると指摘。「大きな岩が自然に崩れることは考えにくい。登山者が普段、登山道を離れて岩場を踏み歩き、より不安定な状態になって落石につながった可能性もある」と話す。

 乗鞍岳は標高約二千七百bの岐阜県側の畳平まで車で行くことができ、そこから三、〇二六bの剣ケ峰山頂までは徒歩で二時間ほど。比較的手軽に三千b級の頂に登ることができるため、登山歴の少ない中高年者や中学校などの学校登山も多く訪れている。