禁止の外来植物白神山地に

種子靴などに付着し侵入

信濃毎日新聞 掲載

平成17年10月21日(金)


 世界自然遺産に登録された青森、秋田両県にまたがる白神山地では、外来植物の持ち込みは禁止されているものの観光客の衣服に付着して持ち込まれ、繁殖が広がっている。最近は人里に下りて畑を荒らしたクマに種子が付いて持ち込まれることもあり、管理する国や自治体が対策に頭を痛めている。

 青森県などによると、年間約五千人が訪れる白神岳(深浦町、一、二三一b)の山頂トイレや避難小屋周辺には外来種のオオバコがぎっしりと繁殖。登山客の靴に種子が付着して運ばれ、もともと生えていた植物をオオバコが駆逐した形だ“白神岳山頂は世界遺産地域との境界付近にあるだけにい「ここから先はなんとしても食い止めたい」(総務省青森行政評価事務所)としている。

 白神山地の中心部にある核心地域(約一万f)は、秋田側は入山が禁止されているが、青森側は二十七ルートに限り入ることができ、年間約六百人の入山届けがある。東北森林管理局の原田正春自然遺産保全調整官は「核心地域の広範囲で、オオバコの密生が確認されている」と明かした。

 東北の伝統的猟師マタギの家系で、現在も白神山地で猟をする青森県鯵ケ沢町の吉川隆さん(55)も「白神の奥深い山の中にあるはずのないヨモギやアスパラガスが生えている。人里の畑を荒らしたクマが種子を付けて持ち込んだか、クマのふんによるものだろう」と推測する。

 東北森林管理局などは十月からは白神岳の登山口広場に靴ブラシを設置し、種子を取り払ってから入山するよう呼び掛けている。原田調査官は「当面は大々的な除草はしない。推移を見守っていきたい」と話している。

写真:世界自然遺産地域に繁殖する外来種子のオオパコ(手前)=03年7月、青森県深浦町の白神岳山頂付近(青森県深浦町捉供)