戸隠に響く笛・太鼓合併後初の「鬼女紅葉祭り」

信濃毎日新聞 掲載

平成17年10月17日(月)


 長野市戸隠の荒倉キャンプ場などで十六日、恒例の「鬼女紅葉(もみじ)祭り」が開かれた。同市と旧戸隠村の合併後、初めての開催。神楽や謡曲などが披露され大勢の見物客でにぎわった。

 キャンプ場近くの紅葉稲荷(いなり)神社で地元往民が獅子神楽を奉納。親子連れや写真家が取り囲むように見物し、箇や太鼓の音が杉林に響いた、キャンプ場の舞台では、謡曲や「戸隠太鼓」が披露され、住民による野菜やおこわなどの販売コーナーも人気だっこ。

 戸隠に伝わる鬼女紅葉伝説にちなんだ祭りで、住民有志や戸隠観光協会でつくる実行委員会の主催。家族で初めて訪れた同市の会社員山村美佳さん(29)は「味わい深い山里の祭り。ずっと続けてほしい」と話していた。

写真:見物人が取り囲む中で奉納された獅子神楽


紅葉伝説

 平安の昔のことです。承平二年奥州の会津に生まれた少女呉羽(くれは)は子の無かった夫婦が魔王に願って生まれたためか輝く美貌と才知に恵まれて育ちました。やがて紅葉と名を改めた彼女は、両親と共に京の都に上り美しい琴の名手として都中の評判になり、源経基公の寵愛(ちょうあい)を受けるようになりました。       

 しかし紅葉は正妻を呪術で除こうとして事が露見し信州・戸隠山へ流されてしまいますが、都への想いが断ち難く配下を集めて力を貯えます。これを聞いた朝廷では、平錐茂を追討にさし向けますが住み家も分からず、神に祈って矢を放った維茂は落ちた方角に進みます。待ち構えた紅葉たちは美しく装って毒の酒をすすめたところ維茂に見破られ、鬼女の正体を現した所を討たれて果てました。

 以上が大方の伝説や物語による鬼女紅葉伝説ですが、隣村の鬼無里のように讒言(ざんげん)によって流された紅葉は村人に医術や裁縫、礼儀を教えてくれた美しい恩人(貴女)という所もあります。

 第47回「鬼女紅葉祭り」が10月16日(日)戸隠荒倉キャンプ場(荒倉山登山口)で行われました。

 9時30分から鬼女紅葉の菩提寺である大昌寺での参拝から始まり、荒倉稲荷神社で鬼女紅葉供養祭、獅子神楽奉納に続き、キャンプ場にある謡曲舞台では、伝承の謡曲「紅葉狩」を始め、詩吟・曲芸・舞踊・里神楽・戸隠太鼓なども行われました。他にも地元ガイドの鬼の岩屋見学なども行いました。

 千葉県市川市からきた、高橋由紀子さん(46)は、昨日、戸隠表山を縦走して、泊まった宿から鬼女紅葉伝説の荒倉山もよい山ですよ、と薦められ、今日、登ってきました。鬼女紅葉祭りがあるというので早々に下りてきました。こんな楽しい伝説祭りがあるのを見て、来年に友人を連れてまた来ます。来年は一夜山も登るつもりです。これから鬼女(貴女)紅葉の鬼無里小京都を歩いてきます。と話していました。NMA記者 矢沢