チベットヘの鉄道完成

青海省と結ぶ文化希薄化の懸念

産経新聞 掲載

平成17年10月16日(日)


 【北京…野口東秀】中国国営新華杜通信によると、チベット自治区のラサと青海省ゴルムドを結び、標高五〇七二bの世界最高所を走る青蔵鉄道が十五日、完成した。この鉄道について、中国政府はチベット振興への効果をアピールするが、多数派の漢民族の流入拡大によるチベット文化への影響やインド国境をにらむ軍事利用の可能性が指摘されている。

 鉄道は総延長千百四十ニキロ。標高四〇〇〇b以上の区間が九百六十`を占める。来年七月から試運転を始め、二〇〇七年七月の開業をめざす。
ラサーゴルムド間の所要時間は約十二時間、ラサ-北京間の長距離列車は二日間で両都市を結ぶ。

 ラサ市内で十五日開かれた完成を祝う式典では、高地、凍土という厳しい環境での工事だったことが強調された。
新華社通信は「中国が誇りとする偉大な成果」と、建設の意義を訴えた。

 地域経済の発展と物価が下がる効果が期待されているが、チベツト仏教の最高指導者ダライ・ラマ十四世が率いる在インドのチベット亡命政権では、鉄道がもたちす経済効果で「チベット文化の希薄化、大量の漢民族流入、世俗化に拍車がかかる」と指摘している。