檜尾岳 遭難時の助けに 無人の山小屋に寝袋

持ち去り・使い放し…過去に断念

管理の男性「節度期待」

信濃毎日新聞 掲載

平成17年10月6日(木)


 無人の山小屋に寝袋など簡単な装備を傭え付ける試みが、中央アルプス・檜尾岳(二、七二八b)の檜尾避難小屋で行われている。登山者が多い駒ケ岳-空木岳の縦走路の中間にあり=地図=「遭難したとき、わずかでも役立てば」との配慮だ。だが、備品を持ち去ってしまう人もいて、定着するかどうかは登山者のマナー次第だ。

 駒ケ根市から小屋の管理を委託されている元ホテル千畳敷支配人の木下寿男さん(70)=駒ケ根市=が昨シーズン、小屋の利用者が自主的に置いていく利用協力金に自費を如えて、寝袋十個と床に敷く断熟シート十枚、ゴザ数枚を購入して備えた。

 小屋は一九五〇年代に、縦走中の大学生が遭難死したのをきっかけに建てたのが始まり。数百bの高低差がある稜線(りょうせん)の縦走で体力を消耗したり、天候が急変した時に登山者が利用している。

 小屋のノートには「宝剣山荘から空木岳を回って下山する予定だったが、雨のため宿泊」「ばてばてで着いた。いい小屋で感謝」といった書き込みがある。

 木下さんは「駒ケ岳ローブウェイで簡単に入山」でき、装備が十分でない人も多い。体を温められるだけでも遭難を減らせる一と備え付けた意義を話す。

 試みは二度目になる。七〇年代にも寝袋や非常食、食器、ガスこんろなどを置いていた。だが、登山者が使い放しにしたり、持ち去ったため中断していたが今回も既に寝袋二個がなくなっており、備品を増やすか様子見の状態だ。

 地元山岳会員には「寝袋などがあることを前提に登山者が装備を怠ると、遭灘を誘発しかねない」といった懸念もある。「欧州で主流の公営無人小屋は食料や寝袋などを常備しているが、登山者は自前の装備で行動し、緊急使用した時は自己申告する方式で運用されている」との指摘も。

 木下さんは「檜尾避難小屋の試みを生かすため、登山者の節度ある行動を期待している」と話している。

写真:寝袋などの装備を置いている檜尾避難小屋。奥は檜尾岳山頂