霧ヶ峰で文化人が交流「山の會」70年ぶりに復活

来月自然学び高原を歩く

信濃毎日新聞 掲載

平成17年9月30日(金)


 一九三五(昭和十)年、諏訪市郊外の霧ケ峰の山小屋で文化人が交流した「山の會(かい)」を七十年ぷりに復活させようと、十月十六日から、登山史研究者や霧ケ峰の山小屋経営者らの実行委員会が「復活第一回『霧ケ峰・山の會』」を開く。

 三泊四日でかつての会や霧ケ峰の自然について学ぴ、高原を歩く。来年以降も続け、かつての会と合わせ記録集も作りたい、と夢を描いている。

 「山の會」は月刊誌「山」を刊行した梓書房の代表岡茂雄が、常連執筆者の作家長尾宏也の山小屋「ヒュッテ霧ケ峰」の経営を応援しようと三五年八月、同小屋で開催。民俗学者の柳田国男や諏訪市出身の気象学者藤原咲平ら四人が山を語り、詩人の尾崎喜八や文芸評論家の小林秀雄らも聴講した、しかし翌年小屋は焼失、会は一度しか開かれなかった。

 会の復活は、尾崎が名付け親となった霧ケ峰沢渡の山小屋「ヒュッテジャヴェル」を経営する高橋保夫さん(65)と、登山史研究者の布川欣一さん(73)=埼玉県=の出会いがきっかけ。それぞれ尾崎や長尾の著書などで会の存在を知り、復活を願っていたという。布川さんは「山をめぐる文化や芸術を大切にする精神を霧ケ峰に再ぴ根付かせたい」、高橋さんは「古くから人の手が入ってきた霧ケ峰は、山と人間のかかわりを見つめるのに最適な場所」と話す。

 復活第一回は十月十六-十九日、ヒュッテジャヴェルで。長尾と岡の親族から話を聞くほか、作家の近藤信行さん、信大名誉教授の沖野外輝夫さん、県霧ヶ峰自然保護センター自然公園管理員の三井健一さんの講演や、車山湿原から蝶々深山にかけてのトレッキング、鷲ケ峰登山などがある。
 参加費三万六千円(八食付きの宿泊費、傷害保険料)。問い合わせはヒュッテジャヴェル(電話0266・58・5205)へ。

写真:「山の会」について書かれた文献を前に、復活に夢を描く布川さん(左)と高橋さん=諏訪市霧ヶ峰のヒュッテジャヴェル