長野市街のゲンジボタル 県庁周辺が供給源

環境保全を訴え

信濃毎日新聞 掲載

平成17年8月24日(水)


 長野市などのホタル愛好家でつくる「長野ホタルの会」 (三石会長)は二十三日までに、同市の犀川北部の広い地域で目撃されるゲンジボタルの大半が、県庁近くを流れる八幡川周辺で産卵、ふ化した幼虫が川の流れに乗って移動したものとの調査結果をまとめた。三石会長は「県庁周辺はホタルの供給源になっていると考えられ、環境保全に努める必要がある」と指摘している。

 八幡川は西長野地区で裾花川から取水される用水。県庁付近で鐘鋳川、北八幡川、南八幡川など七本の用水に分かれ、犀川北部の水田約二百六十五fを潤す。

 会は昨年から今年にかけ、市街地のホタル生息地を会員が歩き、産卵場所を探索。ホタルの成虫は鍋屋田小学校南側、県立図書館西側など十四カ所で見られたが、卵は県庁周辺で数百から数千個の卵塊が昨年六つ、今年八つ見つかった以外確認できなかった。

 三石会最は「護岸工事などに伴い、産卵場所がなくなりつつある」と指摘。県庁周辺の八幡川では県長野地方事務所が二〇〇一年度から護岸の補修工事を進めており、十一月には産卵場所を含む二百十bの区間に着手する予定。同地事所は会とも協議、ホタルの発生に支障がないよう土を埋め込んだ特殊な護岸にずる計画だ。

 県庁周辺の産卵場所では七月下旬、卵塊の一つが、産み付けられていたコケごと削られ、持ち去られたことも分かった。三石会長は「各地のホタルにはそれぞれ固有の遺伝情報があけ、卵をほかの場所で放すと遺伝子が混乱してしまう。心無い行為はやめてほしい」と訴えている。

写真: 八幡川の石垣のコケに産み付けられた、ゲンジボタルの卵(黄色がかった部分)