絶滅危惧種「カワシンジュガイ」

戸隠の川に新種か

屋代南高教諭ら研究発表

信濃毎日新聞 掲載

平成17年8月14日(日)

 長野市戸隠の逆サ川に生息する淡水性の二枚貝「カワシンジユガイ」が、他地域と異なる新種の可能性が高いことが、屋代南高校(千曲市)の小林収教諭、大阪教育大の近藤高貴教授らの研究で明らかになった。カワシンジユガイは環境省レッドデータブックに掲載されている絶滅危ぐ種。新種となるとさらに希少性が増すことになり、生息地保全などの対策が求められそうだ。

 小林教諭は、前任地の長野吉田高校戸隠分校で、逆サ川のカワシンジユガイの分布などを調査。カワシンジユガイの幼生はヤマメ、アマゴなどサケ科の魚のエラに寄生して育つことが知られているが、戸隠のタイプは同じサケ科でも主にイワナに寄生することを一九九九年に発見。この戸隠のタイプと、ヤマメに寄生する大町の夕イプの違いを詳しく調べた。

 まず近藤教授と共同で、戸隠タイプの幼生をヤマメに、大町タイプをイワナに寄生させたところ、ともに二週間以内に拒絶反応が起き、寄生できないことを確認した。次に、北海道大大学院の栗原善宏さんらと遺伝子を詳しく調べた結果、両者は遺伝的にも異なることが分かった。また、殻の形など外見の特徴も明らかに異なっていた。

 「生理生態、遺伝子、形態のいずれも異なるため、逆サ川のカワシンジユガイは新種の可能性が高い」と小林教諭。「県の天然記念物に指定するなどして、生息地と流域を守る必要がある」と話している。

 研究成果は、このほど発行された日本貝顆学会誌「VENUS」に発表した。カワシンジュガイ 褐色の長い楕円形で十数aに成長する。夏でも水温が20度を超えない冷水域に生息し、川の砂底に体を立ててプランクトンなどを食べることから「タチガイ」とも呼ばれる。母貝から出た幼生は、ヤマメなどサケ料の魚のエラに寄生して育つ。2カ月はどで0・5_ほどの稚貝になり、川底に降りる。北海道から中国地方に分布するが、いずれの生息地も局地的で、河川改修や水質汚染の影響で絶滅した場所も多い。県内では逆サ川のほか大町市の中部農具川と居谷里沢で確認されている。

 長野市戸隠の逆サ川に生息するカワシンジュガイ(小林収教輸撮影)