立科の伊藤隆司さん単独で(グーテンターク)

六十の手習いモンブラン登頂

信濃毎日新聞 掲載

平成17年7月22日(金)

仕事の傍ら体力強化・語学 「多く長く」目標に

 六十歳から本格的に登山を始めた立科町芦田のペンション経営、伊藤隆司さん(64)が単独で欧州最高峰のモンブラン(四、八〇八b)にフランス側から登り、このほど帰国した。ペンションを切り盛りしながら英会話のレッスンやトレーニングに励み、念願の名峰登頂を果たした。

 伊藤さんは、宿泊客が減る梅雨時にペンションを休業。格安チケットを買って六月二十七日に出発、マツターホルン(イタリア、スイス、四、四七七b)とモンブランに挑戦した。

 マツターホルンは、六月二十九日に外国人のガイドとザイルを組み、途中のソルペイ小屋(標高約四千b)まで登った。しかし、前日に積もった雪が十aほどあり、「危険が伴う」とのガイドの指示で下山した。

 その後、フランスのシヤモニーヘ移動し、三日午前八時にモンブラン登山を開始。途中の「グーテ小屋」(約三千八百b)で一泊し、四日午前三時に出発、午前七時に山頂に着いた。「頂上に差しかかったころ、真っ白な雪山が朝日で紅色に染まり出し、本当にきれいだった」。モンブランは昨年初めてガイドと挑戦、悪天候のため途中で断念していた。

 伊藤さんは神奈川県横須賀市出身。大手電機メーカーで半導体の設計、生産管理を担当していた。五十歳の時、「自然の中で独立した仕事がしたい」と立科町に移住。

腰痛を治そうとウォーキングを始め、近くの蓼料山によく登るようになった。六十歳で長野市の山岳会「グーテンターク」に入り、本格的な登山技術を学んだ。

 外国人ガイドとヒマラヤやボルネオの高峰に向かい、北極点スキーツアーに参加するなど旺盛にチャレンジしてきた。ただ、ペンション経営という仕事柄、仲間と休みが合いにくいこともあり、今回初めて単独登山を決意。二年前から二週間に一回、町内の英会話教室に通い、半年前からは、十五`の砂袋を入れたリュックを背に近くのゲレンデを登るなど体力づくりも重ねた。

 一人で接客、料理もこなすペンション経営は「体力的に登山よリ厳しい」が、多くのなじみ客に支えられている。「一生懸命働けばお金は何とかなる。お客さんにヨーロッパの山々やそこで見た花の話をするのが楽しみ」と伊藤さん。「多く長く登る」を目標にトレーニングに励んでいる。

写真: 雄大な朝晩けを背に欧州最高峰モンブランの山頂に立つ伊藤隆司さん