松本市安曇の158号早期復旧のめど立たず

 

 

 夏山観光影響か

信濃毎日新聞 掲載

平成17年7月3日(日)

 松本市安曇沢渡付近の国道158号で一日に起きた土砂崩れは、二日になり規模が前日のほば倍の幅七十bに拡大、落石も続いた。現場の前後で全面通行止めになった同国道は松本方面と北アルプス上高地を結ぶ幹線。本格的な夏山シーズンが目前だが、復旧の見通しは立っていない。 

 この日、県土木部と県松本建設事務所が現地を視察した。現場一帯は、崩落していない斜面にも亀裂があり、吉池茂昭所長は「まだ崩落の危険性は高い」と話した。同事務所管理計画課の大平友三課長は「完全復旧には時間がかかるだろう」としている。

 同事務所は三日午前、県土木部長に視察結果を報告、今後の復旧方法などについて検討する。地質の専門家を交えた対策協議のはか、現場付近で梓川の対岸に仮設道路を通す案も検討課題に挙がっている。  

 普通車は、県道乗鞍岳線などに迂回(うかい)。松本電鉄(松本市)が運行する沢渡−上高地間のシャトルバスは全面運休している。上高地から下山する登山客や観光客は、マイクロバスで白骨温泉経由で乗鞍高原に向かい、同高原から大型バスに乗り換え松本方面に向かっている。岐阜県側からは、観光バスなど大型車も上高地を往復することができる。

 二日は午後零時半に、県道上高地線の新釜トンネルが開通。土砂崩落の影響でセレモニーは中止されたが、タクシー利用の観光客や岐阜県側からの大型観光バスが、対面通行が可能となった新トンネルを通って上高地に入った。

写真:国道158号の土砂崩落現場。大量の土砂が道路を覆い、一部は梓川まで流れ込んでいる=2日午後3時半、松本市安曇の沢渡

国道158号通行止め、長期化へ対策望む声

  大型バス運休の上高地一日の大雨の影響で山側斜面の土砂が崩れた松本市安曇の国道158号は二日も崩落が続き、通行止めが長期化しそうな状況となった。二日現在、観光客が公共交通を利用して松本方面から上高地に入るにはタクシーを利用する以外に方法はなく、本格的な夏山シーズンを前に、上高地の観光関係者からは首都圏方面を中心とする登山者や観光客の減少を心配する声が出ている。

 迂回(うかい)路となっている県道白骨温泉線は大型バスが通行できないため、松本方面と上高地を結ぶ路線バスやシャトルバスは全面運休。上高地で宿泊施設を経営する男性は「今のところ予約キャンセルはないが、通行止めが長引くようだと、宿泊料の値引きも考えなくては」と不安げ。

 バスを運休した松本電鉄(松本市)の上高地バスターミナルにあるシャトルバスチケット売り場の担当者も「影響は大きい。十六−十八日の連休までに復旧してほしい」とする。

 上高地には、岐阜県側からは入ることができるため、「心配ばかりしているわけではない」 (鳥居総一郎・上高地観光旅館組合長)との声もあるが、松本方面から上高地に入り、高山に抜けるコースは観光客の人気が高いだけに、通行止めが長期化すると観光客の入り込みに与える影響は大きいとみられる。

 このため、地元の上高地町会は同日、路線バスが迂回路の県道白骨温泉線を運行できるように県松本建設事務所や松本電鉄に要請した。同町会の藤沢繁雄会長は「バスが通行できるよう、行政と住民が一緒になっていい方法を考えていきたい」と話している。

写真:路線バスが運休したため、臨時に出した下山用のマイククロバスに乗り込む登山客ら