ハッチョウトンボ 1万匹の発生予測

蜻蛉学会長「県内最大」
保護団体も喜び

 

信濃毎日新聞 掲載

平成17年6月3日(金)

 

 日本蜻蛉(とんぼ)学会の枝重夫会長(73)=松本市=が二日までに、羽化が始まった伊那市新山のハッチョウトンボ生息地の調査から、今年の発生数を一万匹と予測、「発生量、生息地の広さとも県内最大。有数の生息地」と推定した。地元の保護団体も「昨年より明らかに成虫の発生数が増えている」と喜んでいる。

 ハッチョウトンボは、環境省が自然環境の良好度の指標と指定した十種の「指標昆虫」の一つ。成虫の体長は二a程度と普通のトンボよりかなり小さい。雄は羽化後、体が次第に真っ赤になり、雌は茶、黒、白のしましま。新山地区では昨年六月、高校教論が生息を確認した。

 伊那市から一帯の昆虫生息調査を委託された枝会長は五月二十七日に現地入りし、湿地付近でハッチョウトンボやヨツボシトンボなど十種のトンボを確認。近くの渓流では、指標昆虫のムカシトンボの幼虫など二種を見つけた。今秋まで調査を重ねるが、一帯には三十種程度のトンボが生息するとみている。

 枝会長によると、現場の湿地はアシなど丈の長い植物が少なく、湿地面の日当たりがよい。所々に小さな水たまりがあることも、ハッチョウトンボの生息に最適という。

 地元住民でつくる新山山野草等保護育成委員会は、湿地に木道を設置する方向で検討中。地権者や同委員会は当面、湿地を一般公開しない方針だ。

写真:ハッチョウトンボの雄(左)と雌。体長は2aほど=2日、伊那市新山