中学集団登山備え大丈夫?

「ロープ扱える」31% ツェルト持参23%
県山岳総合センター

信濃毎日新聞 掲載

平成17年5月20日(金)

 登山用ロープを正しく扱える教員がいる学校は3割余、風雨をしのぐツェルト(簡易テント)の携行も2割余―。県山岳総合センター(大町市)が県内の中学校に集団登山についてアンケート調査をしたところ、教員の技術や学校で用意する装備が十分でない実態が19日、明らかになった。集団登山は主に2年生の学年行事。同センターは、担当教員が毎年替わらざるを得ない事情も影響していると指摘し、シーズン本番を前に、より安全な登山のための態勢づくりを呼びかけている。

 調査は1月、国公私立中学と県立養護学校中等部の計215校に調査票を送り、199校(92・6%)が回答した。

 昨年度は168校(78・1%)が集団登山を実施し、130校(77・4%)が事故などに備えてロープを持参した。だが、危険個所で手すり代わりにする場合などを想定し、正しい結び方を身に付け「ロープを固定できる職員がいる」としたのは53校(31・5%)にとどまった。

 ツェルトを持参したのは40校(23・8%)。登山中は天候の急変などで夏でも低体温症になる恐れがあり、動けなくなった場合は風雨を避ける装備が必要。同センターは「ツェルトの方がむしろ重要」と指摘する。

 11校(6・5%)は養護教諭以外に心肺蘇生(そせい)や止血など応急救護の知識を身に付けた教員が1人もいなかった。一方、集団登山を計画した175校中、155校(88・6%)が集団登山の担当教員を昨年4月以降に決めており、本番まで十分な検討や準備をする時間的余裕がない実情も浮かび上がった。

 同センターの伊藤誠所長は、教員に専門外の登山対策で完全な準備を求めるのは現実には難しいとした上で、「専門家との連携で少しでも技術的な課題を解決し、生徒に登山を楽しんでもらうための準備に力を注いでほしい」と話している。

 [県内中学校の集団登山]
 県山岳総合センターの調査によると、2003年度は県内の国公私立197校のうち194校(98・5%)が登山を実施。7月中下旬に80・9%が集中した。80・4%が山小屋に1泊する行程で、行き先は北アルプス・唐松岳(14・9%)、乗鞍岳(11・3%)、8ケ岳連峰・硫黄岳周辺(13・9%)、中ア・駒ケ岳(13・4%)など。急登が続く北ア・燕岳は92年度の31校から13校に減少、中アではロープウエー利用が増える傾向にある。