春の音奏でる雪解けの水 蓼科山頂ヒュッテ

信濃毎日新聞 掲載

平成17年5月7日(土)

 4月29日から続いた今年の大型連休。天候に恵まれて、荒れたのは5月1日夜半から2日朝にかけてだけ。例年より少ないとはいえ、小屋周辺の雪はどんどん解けて、もうテラスの一部に残るだけになった。

 蓼科山の南斜面にあたる女の神茶屋登山口からの登山道にはまったくというほど雪がなくなったが、北斜面の将軍平へと続く急斜面にはまだ3メートル余りの雪が残る。登山者はアイゼンをつけたり、お尻で滑ったりしながら、残雪を楽しんでいた。

 5日も、山頂は300人余りの登山者でにぎわったが、午後2時を過ぎると、それぞれが帰途に就き、静かな山の風情が戻ってきた。

 耳を澄ますと、残雪の下では暖かい日の光を受けた雪解けの水が岩のくぼみに落ち、ポチーン、ポチョーンと春の音を奏でている。雪に覆われていた灌木(かんぼく)の枝が1本、また1本と雪をはねて立ち上がる。まさに、山に春到来である。(蓼科山頂ヒュッテ 米川喜明)

写真:蓼科山北斜面で残雪の急斜面をこわごわ下る登山者の列。安全のため上部にはザイルを固定してある