危険体験 大町に人工壁 長野の山岳会OBが寄付 

信濃毎日新聞 掲載

平成17年4月27日(水)

 ぐらぐらする岩やボルト、浮き石、枯れ木−。岩壁の危険を体験できる登山技術研修用の人工壁が県山岳総合センター(大町市)内に完成し、壁を寄付した長野市の山岳会「信濃登高会わたすげ」のOB会が二十六日、贈呈式を行った。センターによると、こうした壁は全国で初めてという。

 壁は高さ二・五メートルで、危険が体験できる擬岩の壁の部分が幅三メートルほど。隣にはスポーツクライミング用のボルダー壁(幅七メートル余)を設けた。OB会メンバーで、全国各地で人工壁を設計・施工している森山議雄さん(56)=長野市=が手掛けた。

 わたすげのメンバー一人が九〇年、黒部峡谷で転落して亡くなった。その時、県警などとともに救助に当たった同会へのお礼として、メンバーの両親が百五十万円を贈った。若手不足で二年半前に会が解散したため、安全対策に役立ててもらおうと、寄付を決めた。

 贈呈式でOB会代表の佐々木光治さん(53)は「壁が遭難防止に役立ち、安全な登山が普及することを願っている」と語った。県教委スポーツ課の三村保課長は「山岳観光県の長野は、登山の安全に関する教育を実践、普及していく使命がある」と活用を約束した。

 休館の土・日曜日、祝日などを除き、午前八時−午後五時に無料で使える。五人以上のグループは事前に予約が必要。

写真:県山岳センターに完成した人工壁