今年で最後 釜トンネル 上高地への新ルート7月開通

信濃毎日新聞 掲載

平成17年4月21日(木)

上高地へ向かう新釜トンネルの入り口。トンネル接続工事に伴い、7月初めまでは旧釜トンネルの利用となる

北アルプス・上高地に通じる県道上高地公園線の冬季閉鎖が二十一日、解除される。今年七月初旬には、道幅が狭く上高地への「関所」とも呼ばれてきた旧釜トンネル(五百十メートル)をう回する新ルートが開通。地下水がしたたる露岩の中を行く旧釜トンネルを通行する最後のシーズンとなる。新ルートで上高地へのアクセスが容易になる一方で、関所がなくなることを寂しがる声も聞かれる。

 旧釜トンネルの工事は、大正末期から昭和初期にかけて行われた。何度も改良が施された今でも、高さは四・三メートル、幅は四・六メートルにとどまり、バス一台がやっと通れる広さ。こう配は最大15%もあり、バスが立ち往生して渋滞になることもあった。

 一九九九年九月、トンネルの上高地側にある釜上ロックシェッドの一部が土砂崩落で倒壊。これを受けて、県はう回路となる釜上トンネル(六百五メートル)と新釜トンネル(七百五メートル)の建設に着手。〇二年に釜上トンネルが開通した。今年七月初旬には南へ続く新釜トンネルも通れるようになる。

 十八年間、旧釜トンネルを通って観光客を送迎してきたタクシー運転手、大島酉さん(59)は「広いトンネルの方が安全性は格段にいい。ただ、スーッとトンネルを抜けてしまうと、上高地に来た感慨は薄れるかもしれないですね」と話す。

 七月の開通に向けて、釜上トンネルと新釜トンネルの接続工事が行われる。このため二十一日から七月初旬までは、旧釜トンネルから釜上ロックシェッドを走る以前のルートに車両を通す。

 県松本建設事務所は旧ルートの路面を補修し、崩落を事前に察知するセンサーをロックシェッドに取り付けた。

 環境省や県などでつくる上高地自動車利用適正化連絡協議会は、上高地へのマイカーの乗り入れを禁止している。また、昨夏の一カ月間は観光バスの乗り入れも禁止した。今年も週末を中心に観光バス規制を行う。