戦後80年に寄せて-過ちを繰り返さないために

      公益社団法人 日中友好協会 会長 宇都宮徳一郎

 今年、戦後八十年の節目、当協会設立75周年を迎えます。かつて日本軍国主義は中国、ひいてはアジアを侵略し、中国はじめアジアの人々に計り知れない損害と苦難をもたらしました。また、日本の人々にも深い悲しみを残しました。わたしたちの先輩は、中華人民共和国建国の翌年、1950年、「二度と過ちを繰り返さぬ」ことを固く誓い、多くの人々に呼びかけ、困難を乗り越え、日中友好協会を結成しました。

 そして、1972年9月、日本と中国は日中共同声明を発表して、念願だった国交正常化を実現しました。「両国間の国交を正常化し、相互の善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、またアジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである」と。続いて、1978年には日中平和友好条約が締結されました。協会は、その精神にのっとって、日中両国民の相互理解、友好協力増進を目指して、政治・経済・文化・スポーツ・教育など多方面にわたり協力と交流を重ねてまいりました。

 時あたかも、中国が、改革・開放政策へと大きく舵を切った年でした。以後中国経済はおおいに発展し、日中間の往来は飛躍的な発展を遂げました。往復の貿易額は、国別1位で、日米貿易の1.3倍、インバウンドや人材交流も大きく伸びています。今や日本各地に、中国人が周りに生活することが普通になりました。なお一層の相互理解が求められています。当協会は、こうした草の根の民間交流を紡ぎ続けてきたことを誇りとし、その精神を次代へと繋いでいく決意を新たに誓います。

  現在国際情勢が一層複雑さを増し、日中間にも多くの課題が横たわる中、私たちは民間の立場から、引き続き、戦争の悲惨さを次の世代に伝え、平和の尊さを広く訴えていかねばなりません。当協会第三代会長であり私の祖父の宇都宮徳馬が唱えた「日中友好は最大の安全保障」という言葉を胸に刻み、歴史の教訓に学び、友好と平和を希求し続けることこそが、日本と中国、そしてアジアの安定と発展に資する道であると確信しています。あわせて、戦後50年の村山談話の「杖るは信に如くは莫し」という言葉をかみしめたいと思います。

  当協会は今後も、多彩な民間交流を一層推進し、民間交流の中で育まれた信頼に裏打ちされた対話を重ねることで、日中友好の架け橋としての使命を果たしてまいります。それはまた、未来を担う若い世代に、恒久の平和のもとに隣国と共生していく道を示す責務であると考えております。戦後80年の節目、当協会設立75周年に当たり、当協会は中国と手を携えて平和を築き続ける決意を新たにし、民間の立場から日中友好をさらに推進し、それによって世界の平和と人々の幸福の実現に寄与することを、ここに表明いたします。    (2025.8.1「日本と中国」2303号)