手を携えて人類の運命共同体を築こう

                         中華人民共和国駐日大使 呉 江 浩

 新年が始まり、万象が改まるという。2023年を振り返ると、われわれは感染症後の世界経済の回復の難しさを共に経験し、地域紛争があちこちで起きているのを見届け、気候変動など地球規模の課題に対応した。先般、中央外事工作会議が北京で開かれ、習近平総書記が重要演説を行い、新時代の中国の特色ある大国外交の歴史的成果と貴重な経験を系統的に総括し、新たな征途の対外活動を取り巻く国際環境とわれわれが担う歴史的使命を掘り下げて論じ、当面と今後しばらくの対外活動について全面的な手配をした。

 会議の重要な成果は人類運命共同体の構築を推進するという中国外交の主軸が明確にされたことだ。これは習近平外交思想の核心的理念で、どのような世界をつくるか、この世界をどのようにつくるかについて中国のプランを示している。人類運命共同体の構築とはつまり、恒久的平和、普遍的安全保障、共存共栄、開放と包摂に基づく、クリーンで美しい世界づくりを努力目標にし、共に協議共に建設共に享受するグローバルガバナンスの推進を実現の道筋とし、全人類共通の価値の実践を普遍的拠り所とし、新型の国際関係の構築を基本的な支えとし、さらにグローバル開発イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブの実行を戦略的リード役とし、質の高い「一帯一路」共同建設を実践のプラットフォームとして、各国が手を携えて挑戦〈試練〉に対処し、共存共栄をはかり、世界が平和、安全、繁栄、進歩の明るい未来へ向かうよう後押しすることである。

 会議では平等で秩序ある世界の多極化が提唱された。平等とは大国小国の一律平等を堅持し、覇権主義と強権政治〈パワーポリティクス〉に反対し、少数の国による国際問題の独占に反対し、国際関係の民主化を確実に進めるということだ。秩序あるとは多極化のプロセスが全体的に安定し、建設的であるということだ。40年余り前、中日両国の先輩指導者は両国人民の根本的利益から「中日平和友好条約」を締結し、覇権主義反対を明確に強調した。そして中日両国が覇権を求めず、またこのような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対すると厳かに声明した。今日の世界の一連の重大な問題・挑戦を前にして、中日両国は条約の初心を忘れず、共に国連憲章の目的と原則を順守し、普遍的に認められている国際関係の基本的準則〈規範〉を堅持し、真の多国間主義を実践しなければならない。

 会議ではインクルーシブで包摂的な経済のグローバル化が提唱された。インクルーシブとは、世界各国、とりわけ発展途上国の普遍的な要求に沿って、生産要素賦存によってもたらされた国家間および各国内部の不均衡を解決して、発展を十分かつ均衡のとれたものにし、世界各国、とりわけ発展途上国の発展加速に資するグローバル化の形成をはかるということだ。包摂的とは、各国が自身の国情に合った発展の道を歩むことを支持すると同時に、手を携えて全人類が共に発展していくようにするということだ。経済のグローバル化は発展に必要で、人心の向かうところである。人為的に「スモールヤード・ハイフェンス」を築き、陣営の対立をつくるのは時代の流れに逆らうことで、最終的に損なわれるのは全人類の共通の利益である。経済グローバル化の受益者で貢献者である中日両国は引き続き、自由貿易とルールに基づく多国間貿易体制を共同で守り、経済グローバル化の一層開放的、包摂的、インクルーシで、均衡のとれた方向への発展を後押しすべきである。実務協力を深化させ、より高いレベルの互恵・ウィンウィンを実現し、共同でアジアの価値を広げ、地域統合のプロセスをリードすべきである。

 中日は隣同士で、地域の重要な国と世界の主要な経済国であり、平和友好協力は双方の唯一の正しい選択だ。中日双方が時代の大勢に沿って、共同責任を担い、互恵協力を強化し、地域の平和を守るためにプラスエネルギーを注ぎ、地球規模の挑戦に対応するための新たな原動力を与えるよう希望している。去年11月両国首脳がサンフランシスコで会談し、双方は中日の四つの政治文書の原則と共通認識を順守することを重ねて表明し、戦略的互恵関係を全面的に推し進め、新しい時代にふさわしい建設的、安定的な中日関係の構築に尽力することを再確認した。新年に当たり、われわれは日本側と共に、両国首脳の重要な共通認識を積極的に実行に移し、一歩一歩着実に前へ進み、たえず中日関係の新しい展望を開いてゆき、手を携えて人類の一層すばらしい未来をつくることを願っている。

*中国大使館より資料として上記署名論文が送られてきました。日中関係の今後を考える上で、貴重な資料となると思いますので、掲載させていただきます。
「先般、中央外事活動会議が北京で開かれました。会議に関する呉江浩大使の署名文章を添付ファイルにて送らせていただきます。」


<資料>中央外事活動会議、新時代の中国の特色ある大国外交の貴重な経験を総括

中央外事活動会議が12月27、28両日に北京で開かれ、習近平中共中央総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)が重要談話を発表した。中央テレビニュースが伝えた。
 習総書記は重要談話で、新時代の中国の特色ある大国外交の歴史的成果と貴重な経験を総括し、新たな道のりにおいて外交活動が直面する国際環境と歴史的使命を深く明らかにし、現在及び今後一定期間の外交活動について包括的な方針を示した。
 会議では、新時代の外交活動の実践において中国が積み重ねてきた貴重な経験に基づき、以下の必要性が指摘された。
▽原則を堅持しなければならない。人類の未来と運命及び世界の発展の方向に関わる重大な問題において、旗幟鮮明に立場を明確にし、国際道義上の優位性を確保し、団結して世界の大多数を勝ち取る必要がある。
▽大国としての責任を果たさなければならない。自主独立の精神の発揚を堅持し、平和的発展の先導を堅持し、世界の安定と繁栄の促進を堅持する必要がある。
▽体系的思考を確立しなければならない。正しい歴史観と大局観をもって大勢を把握し、統合的なアプローチを取り、主導権を握る必要がある。
▽正しい道を守りながら革新を図ることを堅持しなければならない。中国外交の優れた伝統と基本方針を堅守すると同時に、開拓進取に励み、理論と実践の革新を推し進める必要がある。
▽闘争精神を発揚しなければならない。あらゆるパワー・ポリティクスや覇権行為に断固として反対し、国益と民族の尊厳を力強く守る必要がある。
▽制度的優位性を発揮しなければならない。党中央の集中的・統一的指導の下、各地区・当局は協同・協調し、強大な相乗効果を形成する必要がある。
(「人民網日本語版」2023年12月29日)