<参考資料>
シンポジウム「 台湾有事 を 避けるために 」 報告
                                
                                   広範な国民連合全国事務局

 ロシア国内を含めて全世界で戦争反対の声が高まっています。日本でももっともっと戦争反対の声を高めようではありませんか。

 そうした中で広範な国民連合は衆議院議員会館で 3月14日 、「台湾有事を避けるために」のシンポジウムを開催しました。

 問題提起を柳澤協二さん(元内閣官房副長官補、安全保障・危機管理担当)、それを受けて石破茂さん(衆議院議員、元自民党幹事長)、岡田充さん(共同通信客員論説委員)、 コメンテーターの 羽場久美子さん(青山学院大学名誉教授)がそれぞれ問題意識を述べました。また 会場から 、 仮に「 台湾有事 」 となれ ば最前線となる沖縄からの報告を伊波洋一参議院議員と 新垣邦男衆議院議員が、実際に戦闘を担うことになる自衛隊OBとして林吉永さん(航空自衛隊、空将補)が現状を報告しました。コロナ感染症対策で入場を制限した会場には、衆参の国会議員とその秘書20人近くをはじめ、谷野作太郎元駐中国大使や学者知識人、地方議員、マスコミ関係など70数人が参加し、熱心に討論に聞き入りました。

最後に、広範な国民連合代表世話人の原田章弘さんが、報告の4人の方がたと参加者にお礼を述べた上で、「国会議員の皆さんには国会で有事を起こさせないため 頑張っていただきたい。われわれは国民運動、大衆運動で阻止するために努力しよう」と呼びかけ閉会の挨拶をしました。司会は、全国事務局の山本正治事務局長が務めました。

 柳澤さんは、「ウクライナを見る視点」から論を説き起こした。軍事侵攻したロシアにはNATO拡大への不満と恐怖があった。だから、これを「予防する外交」が必要だったが、それが欠如したことが この 背景にある。だが、戦争、ましてや核の脅しは 絶対に 許されない。大国の横暴を許さない国際世論が必要だ。台湾は中国の内政問題だが、戦争は世界が許さない。そこで「外交が なければ戦争は防げない」と言う視点で問題提起 し た。 アメリカと日本の 「一つの中国」 を確認した 政策 が、台湾をめぐる戦争が この50年間 回避されてきた条件だった 。だ が、いまそれが揺らいでいる。これを 中国が認め てしまう と共産党支配の正当性が失われ、中国は望まなくても「引けなくなる」。力による「抑止」の限界、何が何でも阻止しようとするだろう。米国もそのときには、「同盟国への信頼性」確保のために「引くに引けない」。しかも、その在日米軍の作戦を日本は拒否できないだろう。日本は巻き込まれる。しかも米国の新作戦構想は、南西諸島を中心に日本に配備する巡航ミサイルで対抗する作戦に切り替わった。戦場となる。
 日本の政策目標は、「中国の覇権阻止」ではなく、「米中戦争回避」に置くべき。「外交では防げないとしても、外交がなければ戦争は防げない」。だから日本にできるはずのこととして「米中の仲介」を主張され、日中首脳会談を継続することや中国の求めたTPP加入交渉、中国にだけではなく「米国にも自重を」主張すること、防衛は「せめて」「専守防衛・上陸阻止に限定」することなどを提起した。最後は、政府は「できる外交をなぜやれないのか?」と結んだ。

 石破さんは、政治の師であった田中角栄総理が、中国大陸侵略戦争の従軍経験をもつ「自分たちがいなくなったときが危ない」と述べられていたというところから話された。戦前の中国大陸侵略時の日本のマスコミが「侵略」を煽る一色だったこと、そうした中の帝国議会で帝国陸軍の戦争政策を問いただしただけで議会から除名された斎藤隆夫のことなどの例もあげ、今の政治社会状況に警鐘を鳴らされた。またそうしたときに実質的な「軍隊」である自衛隊を、軍隊でないと誤魔化さず放置せず、例えば「安全保障基本法」を制定し、国民と法のコントロール下に置くことの重要さも提起した。

 岡田さんは、「まるで坂を転げ落ちるように『戦争シナリオ』が完成しようとしている」と日米の対中国戦争戦略を批判した(『日本の進路』3月号)。

 東中欧政治がご専門の羽場先生は、ウクライナの問題を歴史的にもとりあげながらNATOが対ロの軍事同盟でありロシアの脅威となっている問題を解決することなしにロシアを非難できないと、一方的な「ロシア非難」の風潮に鋭く警鐘を鳴らした(『日本の進路』4月号掲載予定の論文添付)。

 伊波さんは、台湾有事となれば確実に沖縄が戦場となることは、ウクライナでは450万人ほどの避難民が出ると予測されているが島の沖縄住民は逃げることが出来ない。かつて県民10数万、全体で20数万が犠牲となった沖縄戦の再来が避けられない。戦争を阻止する以外に生きる道はないと抑止力一辺倒の政府の対中政策を鋭く批判。

 元自衛隊空将補の林さんは、「台湾有事の戦争はできません」ときっぱり。なぜ出来ないか、自衛隊は、人員も足りず、弾薬も足りず、燃料も足りないからだと。分かり易く自民党などの政治家たちが戦争を煽ることの愚を暴露された。

 ウクライナで戦争が始まり、緊張感が高まる中での2時間半のシンポジウムは、、問題は重大で深刻で、議論が尽きないうちに閉会時間となった。ウクライナの問題が目の前で進行しているため、「台湾有事」をどう避けるかの議論ではなく、どうウクライナ戦争に対処するかの議論に集中しがちだったがこれははやむを得ず、必要なことだった。

 国会ではこの日も参議院予算員会集中審議でウクライナ戦争と台湾有事が質疑され、日本も核保有すべきという「核共有論」がテーマとなっていた。安倍元首相や日本維新の会などが唱えていることを野党議員が批判、政府見解を質した。岸田首相は、「日米日米安保条約で核抑止が機能している」から、「共有」は必要ないとの答弁で、野党もそれ以上追求しなかった。対中国外交を求める意見は聞けなかった。

 月刊「正論」(産経新聞社発行)は10日10日、自民党の高市政調会長と櫻井よしこ氏で「何といっても国防力の強化だ」とのシンポジウを開催、また、自衛隊OBなどからなる平和・安全保障研究所は5日シンポジウム「台湾海峡の緊張と日本の安全保障」を那覇市内で開き、そこで河野前統合幕僚長は「日米で抑止力を構築して台湾併合に乗り出せないようにする必要がある」などと「抑止力強化」を煽っている。

 こうしたなかで、抑止力強化一辺倒ではなく、「出来るはず」の外交の重要さを主張したこのシンポジウムは文字通り時宜にかなったものであった。

 50年前、、田中角栄首相と周恩来総理は、侵略戦争と植民地支配、その後の敵対を解決して国交を結んだ。それから50年間、日中両国の友好協力関係は大きく発展し、平和な環境下で両国経済の繁栄と国民生活の安定を実現した。

 今こそ、政治の力で、さらなる発展へ、平和な両国関係を築くときだ。わが国政府は、50年前の約束、侵略と植民地支配の反省と台湾は中国の一部という「一つの中国」の原点に戻るべきである。アメリカは、覇権を維持しようと中国に干渉、抑圧を試みている。アメリカの戦争挑発の策動に反対し、米中戦争を阻止しなくてはならない。ましてや日本が台湾有事のフロントになるなど許されざる事だ。

 日中関係の平和と発展のための闘いを発展させる上で重要な意義を持つ取組みとなった。皆さん、ありがとうございました。頑張りましょう。(2022.3.14)