<資料>
<今日の話題>中国のデジタル化
             山九国際物流推進部参与・日比浩二

 菅政権は、デジタル庁創設によるデジタル戦略を目玉政策の1つとして掲げた。日本の社会全体が世界の潮流に大きく乗り遅れているだけに、最後のチャンスとして期待したい。
 
 中国は、AI・ビッグデーターなどの先端技術を駆使、デジタル社会構築に向け邁進している。’10年代には、ネットと電子決済の普及により電子商取式が急成長、昨年のデジタル決済額はGDPの3分の1に到達。越境EC(海外販売のネットショップ)は個人輸入優遇の「電商税」の個人適用制限枠管理を身分証No.との照合で対応。EC大手のアリババ、京東集団では自動化物流センターを開設、特定区域での無人配送車のテストに着手。一般消費活動では巷(ちまた)の露店商での物品販売までスマート決済が浸透、すでに6億人が使用。

 経済・貿易活動では、関連の許可・届け出手続きはネット申請が一般化し、通関は全国統一のED I 申告(電子データ交換による申告)の「通関の一体化」に制度を大改革、貿易通関業務の画期的な効率・迅速・簡便化を実現。’01年導入の「電子口岸システム」は貿易企業と12の関連行政機関がデータを連動し、一つのデジタル行政を確立。

 また、コロナ対策の一つとして感染者の行動追跡のデジタル技術が活躍。さらには、銀行を介在しない次世代の貿易決済方式の「デジタル人民元」の実証実験も始まる等、デジタル化は様々な分野で猛烈な勢いで進行している。

 その経緯は、’90年代に始まる。情報ネットワーク化を改革開放推進の重要な戦略課題と位置づけ、金橋PJ(情報インフラ)、金関PJ(貿易・通関情報処理)、金カードPJ(金融情報処理)の3大プロジェクトの研究に着手。’00年10次5か年計画にて、プラットホーム構築、Eサービス開発、戦略的ビックデータベース構築を基軸とした行政情報ネットワーク化を国策プロジェクトとして位置づけ、特定の地区・期間でのシステム導入の試行を経ながら、全国的な連動に展開。中国の政治体制ならではの長期的な国策対応により、デジタル化は確実に成果を上げてきている。先行する中国の各分野の動きには今後とも目が離せない。
(「国際貿易」2020.10.15)