「なんとなく」から抜け出して

                                         人民中国雑誌社東京支局長 于文

皆さま、こんにちは。

長野の読者会は今年度の総会を迎えました。読者会は成立してから、弊社の徐耀庭元社長、陳文戈社長、王衆一編集長、王漢平副社長が皆、皆様の勉強会に参加させていただきました。皆さまのご意見やアドバイスが直接人民中国の上層部にゆき届き、私どもの雑誌作りに、大変貴重なご意見を頂けましたこと、心より感謝申し上げます。長野の読者会の新年度を迎え、この場をお借りして、皆さまの多大なるご支持とご協力に対して、謹んで感謝の意を申し上げたいと思います。今回はあいにく、熊本被災地の取材日程と重なってしまい、総会に参加することができませんので。東京支局の日本人スタッフに、私のスピーチを代読してもらいます。よろしくお願いします。

 テーマは「『なんとなく』から抜け出して」です。実は、これは今年三回目になりますパンダ杯全日本青年作文コンクールのテーマの候補でした。残念ながら採用されませんでしたが、面白いテーマですから、もし私が書くことになったら、と思いまして、自分で書いてみました。私が書いた作文はもちろんパンダ杯に投稿できませんが、今日は、皆さんに採点していただきたいです。では、「なんとなく」から抜け出して。

 「中国といえばどんなイメージ?」と聞くと、「なんとなく怖い」「なんとなく好きじゃない」「なんとなく…微妙」などの答えをよく耳にします。どうも中国に関するイメージが悪く、しかもあまりかかわりたくないようです。最近の日本人の若者は「なになにみたいな…」「なになにらしい…」といった表現を多く使い、自分に責任の主体性がなくなるような言い方が流行っているらしいですが、中国に対する印象が良くないという主体は日本人にあることは、私は受け止めたくなくても、多くの中国人がそう思っています。

また、主観的な印象から客観的な数字を見ると、3月に内閣府から発表された世論調査の結果では、80%以上の日本人は中国に対して好感を持っていないということでした。

主観的な印象であれ、客観的な数字であれ、いずれにしても中日の国民感情が悪いという結論が出たのです。改善しようと政府間も民間も言いながら、いわゆる脆弱状態で、問題は深刻ですね。

しかし、日本人はそんなに中国人が嫌いでしょうか。「なんとなく」という答えをさらに掘り出して、どうして中国が嫌いかを、はっきり嫌いな理由を答えられる日本人はその80%の内、何割でしょうか。

 だから、「なんとなく」と答える前に、「どうして」を先に考えてほしいです。

被害を受ければ、加害者を嫌いになる。それは言うまでもない人間の一般的な反応です。例えば、多くの中国人観光客に来られて、町がうるさくなり、汚くなり、日常製品が暴買いされて品切れになったりして、身の回りに不自由や不便を感じたら、中国に対する印象が悪くなることは当然理解できます。一方、中国人の暴買いにより、直接製品やサービスが売れるようになったり、小林製薬の株を買って儲かったりしても、周囲に言わないのも東洋人の特徴ですね。しかも、自慢話を抑えて、噂に乘って被害や苦労話をすることも「大人らしいコミュニケーション方法」でしょう。実は、肌で被害を感じた人と儲かった人、いずれも少数です。結果、多数の関係ない人はネガティブな噂を聞いて、噂を伝えて、「なんとなくいやな中国」が蔓延しつつあります。そのような中で、噂をスピーカーのように伝えたのがメディアでした。

では、「なんとなく」から抜け出して、身をもって答えを探してみたいと思います。

ところが、噂の力が強くて、誤解を起こしてしまうことは、どこの国でもあります。日本人は中国に対する間違った認識やイメージがあることと同じように、、中国人にも、日本に対する誤ったイメージや認識もあります。私の日本の留学時代、このような話は数え切れないものでした。

2002年の秋、人生初の海外、しかもこれから長い一人での生活、不安に溢れていました。日本の物価は中国より5倍ほど高いというイメージがあり、できるだけ日用品を中国から持ってきました。結局、日本に到着して、スーツケースの三分の一のスペースを占めたトイレットペーパーを出そうとすると、日本のどこのトイレにもすでに備え付けられていて、非常に悔しい思いをしました。また、生ものが食べられないと心配してくれた両親がインスタントラーメンをいっぱい詰めてくれたのですが、刺身を口にした瞬間、世の中にこんなおいしいものがあったのかと感動したものです。あれ以来、インスタントラーメンは、スーツケースの中で、永遠の眠りにつきました。

私のように、日本に実際にきて、一見で百聞を考え直し、正しい認識ににたどり着いた人は多いです。日本から帰ってきた中国観光客で、もう一度日本に行きたいという人は、90%以上と言われています。長年中国市場に挑戦し続けし、現実と失敗を学び、成功した日本企業もたくさんあります。人民中国が主催したパンダ杯全日本作文コンクールの受賞者たちは、あいにくPM2.5のレッドアラームの日に北京を訪問し、町の状況とテレビの映像の差を身をもって経験しました。また、北京の市民の家庭で、現地の人々と食卓を共に囲めば、中国人は何を考えているか、何に悩んでいるのか、日本を侵略し、世界を制覇するという考えなど全く考えないことに気付いたはずです。

自分の目でイメージを確かめて、答えを見つけた彼たちは、「なんとなく」の言葉は、もう口から出ることはないでしょう。いいところと悪いところ、そして好きなのか、嫌いなのかがはっきり分かってきたはずです。

多くの日本人とさらに多くの中国人は「なんとなく」から抜け出してほしいです。そして、口ばかりの改善から、確実に脆弱性を補強することで、必ずしや、両国の友好関係が見えてくることを信じています。

ご清聴ありがとうございました。

               -2016.5.21長野県人民中国読者会定期総会での講演(代読)-