春節にちなみ帰国者への理解を深めるつどい・体験発表と交流会(2/11)
県と県日中友好協会は2月11日、「第6回中国帰国者への理解を深める県民の集い」を長野市内のホテル・サンパルテ山王で開きました。旧満州(現中国東北部)に渡り、敗戦時の混乱で取り残された中国残留孤児らが体験を発表、あわせて昨年4月開館した満蒙開拓平和記念館の報告も行われ、220人が聞き入りました。第2部では東京中国歌舞団による歌と民族楽器演奏を堪能し、第3部の春節交流会では餅つきやくじ引き抽選会、歌や踊りの披露、最後にヤンコー踊りを楽しみました。
第1部では主催者を代表して小口由美・県地域福祉課長と井出正一・県日中友好協会会長(元厚生大臣)があいさつし、「長野県は全国一満州開拓団を送り出し多くの犠牲を出した。日中国交正常化以来、長野県に永住帰国した1世は約400名で、その家族合わせると4300人の中国帰国者の皆さんが県内で暮らしている。2008年には新帰国者支援法が施行され、更に本年秋からは1世の配偶者支援の態勢ができた。一方帰国者1世の高齢化が進み、引きこもり防止や介護、2世の就労などの課題もある。帰国者の皆さんが、地域や県民の皆さんの理解を得て、平穏で幸せな生活を送ることができるように国、県、市町村、関係者が連携して支援活動に取り組んで行きたい。満蒙開拓平和記念館も昨春オープン以来、2万5千人余りの参観者が訪れて全国的な関心を集めていてよろこばしい。日中関係は尖閣問題で引き続き大変厳しい状況にあるが、帰国者の皆さんには友好の架け橋としても活躍願いたい。春節にあたり楽しく交流し理解を深めましょう」と語りました。
体験発表で岩本くにをさん(81)=下伊那郡松川町=は、「9歳のとき1941(昭和16)年に泰阜村開拓団の一員として家族と一緒に旧満州の大八浪に渡ったが、敗戦前後に両親、兄姉を相次いで亡くし、逃避行の末に妹とも生き別れてしまった。一時は死のうと思ったが親切な中国人に助けられた」と振り返えりました。その上で、「日本は戦争で多くの人の命を失い、中国はじめ世界の人々に取り返しのつかないことをした。もう二度と戦争をしてはいけない」と強調しました。
石坂万寿美さん(70)=松本市=は、中国残留孤児にとって配偶者は養父母と同じように孤児を守ってくれた恩人であることを紹介し、「2008年施行された新援護法で生活が安定し幸せを感じている。しかし孤児がなくなった場合、残された配偶者が無年金になってしまう問題点があり、これを、解決するため国会に請願署名を提出する運動をおこした。県日中友好協会はじめ多くの県民の皆さんの協力をいただき全国10万人署名を達成でき、昨年末の国会で配偶者支援法が衆参両院を通過し成立した。心から感謝申し上げます」と語りました。
池田愛子さん(30)=長野市=は、帰国者2世の妻の立場から発表しました。「来日以来言葉に苦労したが日本語教室で日常会話を学び生活にもなれ、子供も生まれた。子育てに一段落したら簿記と日本語1級検定にチャレンジし働きたいと思う」と前向きに生きていく決意を語りました。
特別報告として、飯田日中友好協会事務局長の小林勝人さんが昨春阿智村に開館した「満蒙開拓平和記念館」について映像を使って説明。歴史展示や体験証言・山本慈照氏ゆかりの展示などが若い世代にも写真や資料・映像で実感できるよう工夫をこを凝らして展示されている。また記念館脇に「鎮魂の碑」とともに「平和友好の碑」が建てられ、その台座には、周恩来総理ゆかりの「前事不忘、後事之師」の文字が刻まれていることなどを紹介しました。地元の中学生らが平和学習で訪れている様子も紹介し「平和の尊さを長野から日本、そして世界へと伝えていきたい」と語りました。
第2部の東京中国歌舞団の公演では、陽二蓮さんの歌の世界と劉錦程団長の揚琴、黄恬さんの中国笛の演奏を楽しみました。会場は春節の華やかな雰囲気に包まれました。最後に陽さんのリードで「北国の春」と「ふるさと」を歌いました。
第3部の春節交流会では長野市日中女性委員会の皆さんが友好の黄色のハッピ姿で、交流会の進行・盛り上げに大活躍でした。アトラクションとして臼と杵を使って、帰国者の皆さんが次々と餅つきを体験しました。抽選会も行われくじを引き当てた人たちが景品を受け取って喜んでいました。飯田、長野、上田、松本、伊南、飯山の日本語教室に通う帰国者の皆さんが「北国の春」「富士山」「星影のワルツ」「ふるさと」などを一生懸命歌い大きな拍手を受けました。長野教室に通う皆さんは練習してきた踊りを披露し、また池田充さん作詞の「我愛你長野」を発表して大きな拍手を浴びていました。最後に中国の東北地方に伝わるヤンコー踊りを会場いっぱいににぎやかに踊りました。参加した帰国者の皆さんは「大変楽しい春節のつどいだった。来年も参加したい」と語っていました。
飯田下伊那、伊南、松本、佐久、上田、千曲、長野、中野、飯山などからおおぜいの帰国者や支援者、市民のみなさんが参加しました。山田火砂子監督(山本慈照氏の生涯を描いた映画「望郷の鐘」の監督)、和田登『望郷の鐘』原作者、堀内千恵子県地域福祉課長、竹内正一同係長、北原昇長野市厚生課長、高橋康雄部落解放同盟県連副委員長、朱丹陽中国国際放送局孔子学堂担当者、張金霞県国際交流員、福沢宏夫・村山ひとみ県日中副会長、西堀正司県日中理事長、西沢毅県日中帰国者留学生委員長らも出席し帰国者を激励し交流しました。