映画「望郷の鐘」、信州から平和のメッセージ(12/6)
「中国残留孤児の父」と呼ばれた故・山本慈照さんの半生を描いた映画「望郷の鐘−満蒙開拓団の落日」が完成し、12月6日から長野・松本・飯田市で先行上映されています。
長岳寺住職だった山本さんは1945年5月、旧満州に教員として渡り、8月の敗戦後、シベリアに抑留され1947年に帰国。妻と子供1人が逃避行中に死亡したことを知らされます。「日中友好手をつなぐ会」をつくり、中国残留孤児らの肉親探しや帰国に尽力しました。
この夏、ゆかりの阿智村のロケには多くの村民が出演し、子役の小学生たちも大活躍しました。
山田火砂子監督は「二度と戦争を起こしてはいけない。子どもたちに見てもらい、歴史の真実を知って欲しい」。原作者の和田登さんは「25年前に出版した時は話題にもならなかった。今回は時代への怒りから反響を呼んでいる」。作家の井出孫六さんは信濃毎日新聞の夕刊コラムに「国策という名の落とし穴」の一文を寄せました。
明年は敗戦から70周年。信州から発信された映画は、平和の“のろし”として全国に広がることでしょう。(松原京子)
☆12月6日長野ロキシーでの上映後に監督の山田火砂子さん、女優の磯村みどりさんが舞台あいさつを行いました。山田監督は東京大空襲など自身の戦争体験を話しつつ「他の作品を先延ばしにしてこの映画を作り上げた。満州での事実を今の教育に入れて欲しい。この作品で戦争は嫌だということを子供たちに伝えたい」と熱く語りました。磯村さんは「映画を観たら自分だけで納得せず、若い人や子供たちに伝えてほしい。それが私たちの役割だと思う」と力を込めました。また磯村さんは自身も気に入っているという中国人役・マーメイのセリフを披露。迫真の表現力に、会場は温かい拍手に包まれていました。
☆上映館:長野ロキシー(TEL026-232-3016)、飯田センゲキシネマ、飯田トキワ劇場、松本シネマライツ