再建は経済復興を促進する 日本株市場に転機?



 「証券時報」が伝えたところによると、日本の野村証券はこのたびの東日本大震災に関連して、このほど次のような見方を示した。

 今月11日に発生した東日本大震災は、日本の未来にとって厳しい試練となった。このたびの衝撃が過去20年にわたる日本の経済、社会、政治の不健全な状態を一層強め、これによって経済がデフレの陥穽から脱出することが一層困難になり、また財政赤字からの脱却を一層困難にするのではないか、いった懸念がある。また一方で、地震は日本人の決意を励まして変化の促進剤となるのではないか、日本経済の一つの転換点になり、日本の株式市場を20年続いたベア市場から脱却させるのではないか、との期待も寄せられている。今、評価を下すのは時期尚早だが、地震後に出現した一連の積極的な変化の跡をみると、日本経済は復興の道を歩み、よりよい未来を創出していくことが強く予感される。

 ▽再建は経済復興を促進する

 地震の影響を受けて、われわれは2011年の日本の国内総生産(GDP)の実質成長率予測値を0.4ポイント引き下げて0.9%とすると同時に、2012年のGDP実質成長率予測値を0.3ポイント引き上げて2.5%とした。地震は今年第1-2四半期(1-6月)のGDP実質成長率を0.6ポイント引き下げる見込みだが、経済にすぐに現れる影響は限定的とみられる。またわれわれは経済再建の加速期の予測を2011年第2四半期(4-6月)から同年第4四半期(10-12月)に繰り下げ、加速期になれば再建関連の需要が経済に促進作用をもたらすのは確実だと考える。

 現在、資本ストックの損失を確定するのは難しいが、阪神淡路大震災の経験を踏まえておおまかに算定すると、損失額は約12兆7千億円に達するとみられる。

 需要をみると、地震による損害、輪番停電、原子力発電所の問題への懸念から、消費者が支出を控える可能性がある。われわれはこうした傾向による実質GDPの減少幅が、損失全体に対するわれわれの予測値を一時的に上回ると予想する。われわれは日本経済は2008年のリーマンショックの時ほどには悪化しないとみている。当時の日本の実質GDPは2四半期に8.1%も低下した。失われた資本ストックが再び備わるようになれば、12兆7千億円(名目GDPの約2.6%に相当)規模の長期にわたる再建需要が生まれることが予想される。
▽ポスト地震市場では控えめな楽観的態度で

 地震は悲劇ではあるが、この自然災害は日本がよりよい未来を作り出すための促進剤となる可能性がある。経済学的には、このたびの自然災害は(広い視点でいえば)供給に対する直接的なマイナス影響であり(人材、インフラ、資産に損害を与え、経済活動を停滞させた)、また需要に対する積極的な影響でもある(積極的な影響は時間差効果によって数年にわたり継続する)。GDPに対する影響について言えば、経済の水準とペースとを区別して考えることが必要だ。通常の情況の下では、潜在産出量は低下する(本来あるべき成長ペースと比較すると、当四半期あるいは次の四半期に経済成長ペースは一層低下する)が、その後は経済は急速に成長することになる。

 だが菅直人首相の評価に暗示的に示されるように、このたびの地震による影響はGDPが減少するといった単純なことだけにとどまらない。原発の原子炉が破損したことにより短期的な不確定性が増大し、地震による損害が最終的にどれくらいのものになるかがはっきりしなくなった。とはいえわれわれは一連の積極的な事象も目にしており、このたびの事態に対して控えめな楽観的態度を取りうる一連の理由も存在する。

 第一に、地震は日本の政局や財政政策に著しい影響を与えることが予想される。地震発生前には政府与党と野党との間に激しい政治的対立があり、予算案や関連法案の成立が滞って、経済低迷のリスクを生み出していた。だが地震はこのような政治的局面を劇的に変化させており、政界は今後しばらく対立を棚上げするとみられる。また今後一定の期間は、内閣再編や国会の解散、総選挙といった重要な政治的事件は起こらないとみられる。衆議院を通過した2011年度予算案は修正なしで国会を通過する可能性が高い。また赤字融資のための債権発行に関する特別法案が早急に可決される見込みだ。こうしたことから、われわれは地震が政治の安定性を強化するとともに、財政政策決定の柔軟性を高めたと考える。

 第二に、より拡張的な財政政策と通貨政策との組み合わせがうち出される可能性がある。これはデフレ問題で苦しみ続けてきた日本には早急に必要なことだ。日本は危機的な財政状況にあり、多くの人が拡張的な財政政策の実施は難しいのではないかとの懸念を抱いている。だが日本と日本政府との間には天地の差があり、日本政府には債務問題が存在するが、日本にはない。08年の世界金融危機から先週月曜日(3月21日)まで、日本の中央銀行(日本銀行)は資産負債表の規模を拡大することはほとんど考えてこなかったため、これから日本国債やその他の資産を購入することにより(金融超過準備を融資に充てる)資産負債表を拡大するだけの力を十分に備えている。

 第三に、ここ数年来、日本の「国家ブランドイメージ」が低迷していたが、現在、世界中が日本の遭遇した不幸に同情を寄せている。このほど行われた主要先進7カ国(G7)の会議では、日本と協調して為替市場に介入するという意外な決定がなされたが、ここには世界の日本に対する同情の念が反映されている。日本にはイメージを作り直し、世界における地位を変化させるチャンスがあるといえる。

 第四に、今後の日本には一連の再建や新たな建設が必要になる。日本では人口の高齢化により建築分野の労働力が減少を続けており、再建で生まれる建築労働者の需要を受けて、日本は移民政策や労働政策の再考を迫られることになるとみられる。

 福島県の原子力発電所、電力不足、為替市場と株式市場には、いずれも大きな不確定性が存在する。われわれの修正後の経済先行き見通しでは、東北地方で大規模な放射能汚染という切迫した情況は出現しない。だが最終的な結果がわれわれの予想よりも悪く、株価が暴落したとすれば、われわれは見通しを下方修正せざるを得なくなる。情報の不断の公開(経済指標と損失の報告を含む)を受けて、われわれは地震の経済への影響を継続的に評価し、必要な場合には予測を修正する。(編集KS)

 「人民網日本語版」2011年3月28日