地震報道にみる日本メディアのプロ意識

 中国紙、新京報はこのほど、「東日本大震災の報道から日本メディアのプロ意識がうかがえる」と指摘する論評を掲載した。内容は以下の通り。

 「国がどんな大きな災害に見舞われようとも、取り乱さず、それをしっかりと伝える使命が公共メディアにはあるのだ」----。

 壊滅的な地震・津波とそれに誘発された放射能漏れ、数千回に上る余震・・・・・・わずか数十時間に、数々の災難が日本の東北地方に襲いかかった。しかしこうした危機を前にした日本の公共メディアからは、プロ意識と思いやりの心が垣間見えた。英紙フィナンシャル・タイムズ中国語版(電子版)の総編集長の言葉を借りれば、「日本の公共メディアは国家の危機を前に、全てを乗り越える公共プラットフォームとなり、国民の精神と秩序をつなぎとめた」----。

 1200年に1度といわれる巨大地震が持つ破壊力は四川大地震の20倍に相当し、その惨状から世界の破滅を想起する人も少なくないだろう。この点だけを考えても、被災地の状況を現場から伝えるリポーターや記者が恐怖に震え上がり、取り乱してしまっても無理はないというものだ。だが日本の公共メディアの反応は違った。地震発生から現在まで、危機報道の管理において高いプロ意識を見せつけた。

 NHKを例に取ると、キャスターの落ち着き払った表情は、危機にも動じない強い意志を感じさせた。画面には犠牲者のクローズアップもなれけば、叫び声を上げる被災者のカットもなく、現場のレポーターが声を張り上げてセンセーショナルな報道をすることもない。日本に留学している中国人学生は今回の地震を通して感じた日本メディアの印象について、「(日本の)テレビ局の報道はとても落ち着いていて、文句の付けようがない。情報量もしっかりあってプライバシーも保護している。データも理性的なものだし、緊急情報を流してもパニックをつくることはない」と感慨を込めて話す。

 NHKは日本で最も影響力のある報道機関。公共的なメディアとして、「独自のスタイルで放送すること」に第一の価値を置き、独立性と信頼性を保っている。大災害にあってもそれが揺らぐことはない。

 第二の価値は最新情報をリアルタイムに伝えること。確認がいったん取れれば、繰り返して放送する。印象深かったのは、官房長官の記者会見を実況中継中、福島第一原子力発電所1号機が爆発した可能性があると分かると、すぐに画面を切り替え、放射性物質から身を守る方法や避難情報を繰り返し流すとともに、数分おきに注意を呼び掛けたことだ。共同通信や時事通信などほかのメディアも、それぞれの視点で生存者の安全と犠牲者の尊厳を守り、メディアの社会的責任を果たした。

 第三の価値は情報の全面性を追求すること。NHKは日本語、英語、中国語、韓国語など5言語で報道を行っている。これは日本語ができない視聴者に配慮したものだ。日本の各大手メディアは、福島第一原発の敷地での放射線量が1時間に1015マイクロシーベルトに達したことを直ちに報道すると同時に、「一般人の年間限度量」に当たると説明し、「影響は大きくない」などと当り障りのない表現でごまかすことはしなかった。

 公共メディアはその他の大衆メディアとも営利目的の商業メディアとも異なり、国と国民およびそこに根付く文化を守る役目がある。ピューリツァー賞で有名な米ジャーナリスト、ジョーゼフ・ピューリツァーが言うように、社会を第一線から見渡し、国内に対しては距離や時差に関係なく意思疎通を図り、海外に対しては国家のイメージとなる広報外交大使でなくてはならない。日本の大災害に世界が涙を流しているのは、日本のメディアがあるべき役目を果たしていることと関係がある。国がどんな大きな災害に見舞われようとも、取り乱さず、それをしっかりと伝える使命が公共メディアにはあるのだ。(編集YT)

 「人民網日本語版」2011年3月16日