「目に見える、草の根国民交流がしたい。その時はぜひ、
協力をお願いします」

民間出身として初の駐中国大使となった
丹羽宇一郎さん
在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使

 ことし6月に駐中国大使に就任。戦後初の民間人の登用に、驚きの声と強い注目が集まった。赴任間近の記者会見の席で就任理由を語った。
 政府からの打診に「いくばくもない余命を何のために使おうか」と熟考を重ねた。金も名誉もいらない。「国のために捧げよう。それなら清すがすが々しく死ねるはず」と決断。さらに「覚悟もある、真剣だ」と念を押した。
 伊藤忠商事時代には、社長、会長を歴任。トップになっても、社員の目線に立つために電車通勤を続けたり、給料を返上し経営再建に乗り出すなど、信念の強さ、人格の清廉さが話題にあがった。友好7団体主催の歓送迎会で、大使は民間出身らしく「目に見える、草の根国民交流がしたい」と強く語った。できる限り中国を回り、「日本の良さ」を伝えたいという。大使の思いは協会にとって心強く、その目指すものもわりと近いようだ。
 「協会と政府が協力してできることはあるか」と大使に訊ねた。「中国から日本に伝わった文化の中には、その後中国で消えてしまったものがある。そういう文化をもう一度中国へ持ち帰るような交流がしたい。とにかく文化の交流がしたい。その時は、ぜひ協力をお願いします」
 人柄の良さがにじみ出ているように、丁寧に応えてくれた。(「日本と中国」2010.8.15)