トキ:「有機の里」長野・木島平村に3日滞在 佐渡で放鳥

木の上で羽を休める3歳の雌のトキ=長野県木島平村で2009年3月5日午前11時54分、竹内良和撮影
木の上で羽を休める3歳の雌のトキ
=長野県木島平村で2009年3月5日
午前11時54分、竹内良和撮影

 新潟県佐渡市で08年9月に放鳥されたトキのうち、3歳の雌が長野県木島平村へ飛来して5日で3日目を迎えた。有機農業を推進する同村の田んぼ周辺にはドジョウなどが豊富に生息し、格好の餌場になっているようだ。

 1日に長野県内で初めて確認され、その後は信濃町、長野市などを転々とし3日午後に同村で目撃された。以来、昼間は扇状地に広がる広大な田を歩きドジョウやミミズを食べ、夜間は木の上で過ごしているとみられる。田の脇には、トキの姿を一目見ようと多くの見物客が集まっている。

 新潟県境に近い同村はスキー場と農業が主要産業。01年から「有機の里」づくりを掲げ、村が牛ふんなどで堆肥(たいひ)を生産し農家が土壌改良や減農薬を進めている。この日午後には芳川修二村長と佐渡市の高野宏一郎市長が電話で協議し、同市がドジョウの差し入れを申し入れたという。芳川村長は「『有機の里』の一つの成果。トキを大切に見守りたい」と語る。

 鳥類の生態に詳しい山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の尾崎清明・標識研究室長は「トキが満足できる環境があるのだろう。餌が十分で、人間がストレスを与えなければ、しばらくとどまる可能性がある」と話している。【竹内良和】

トキ放鳥:県内外から見物人 淡い紅色「きれいだね」−−木島平村 /長野

 ◇初飛来の週末 田んぼは車両通行規制に

 3歳雌のトキが木島平村に飛来して初の週末となった7日、村には県内外から約500人(村推定)の見物人が訪れた。村はトキにストレスなどを与えないよう、餌場となる田んぼ周辺で車両の通行を規制した。

 田んぼ沿いに集まった家族連れらは、くちばしで羽を手入れしたり、餌をついばんだりするトキを見つめた。淡い紅色の羽を広げると「きれいだね」と一斉に歓声が上がった。

 中野市若宮の主婦(70)は「飛んでいるのを見たが、とてもきれいだった。雄とのつがいで来てくれたらいいのに」と目を細めた。

 村は餌場の田んぼ周辺など4カ所に車両の通行を禁止する看板を設置。職員が交通整理にもあたっている。

 村に飛来して7日で5日目。環境省は「木島平村を気に入っているみたいだが、人を多少警戒している」と話している。【渡辺諒】

トキ放鳥:人やカラスにびっくり? 木島平離れ新潟へ /長野

 木島平村に飛来していた3歳雌のトキが8日朝、村を離れ新潟県内に戻ったことが確認された。村や新潟県愛鳥センターによると、トキは8日午前7時ごろ、木島平村上木島地区を北方面に飛び立った。午前8時ごろに新潟県十日町市内で目撃され、環境省が足輪の色から村を飛び立ったトキと確認した。

 このトキは、昨年9月に新潟県佐渡市で放鳥された10羽のうちの1羽。1日に県内へ飛来し、3日から木島平村にとどまっていた。田んぼや小川で餌のミミズなどをついばむ姿が目撃され、7日は約500人の見物客でにぎわった。

 新潟県愛鳥センターの山之内修所長は「今朝はカラス数羽に追い立てられていたと聞く。びっくりして、来た方向に戻っていったのでは」と話した。【神崎修一】

放鳥トキ、なぜ次々と本州へ? 

なぜ雌ばかり3羽も本州に? 新潟県佐渡島で昨年9月に試験放鳥されたトキのうちが3羽が、次々と海を渡り本州に飛来し、関係者を悩ませている。野生復帰プロジェクトを策定した環境省はトキが本州に渡ることを想定していなかった。トキによる知名度アップや町おこしを目指す新潟県や佐渡市は13日、同省に対し、本州に飛来したトキの捕獲と島への移送を求める要望書を提出するが、鳥類の専門家たちは、トキに悪影響を与えると、捕獲には否定的だ。今後、新たな本州飛来も予想されるだけに、行方が注目される。(高木克聡)

 村上市で10日、本州側で3羽目となる個体番号13番の飛来が確認された。昨年11月に関川村で確認された3番と今月3日胎内市で確認された7番と合わせていずれも雌。

 雌が次々と本州に飛来する原因として、同省トキ野生復帰専門家会合座長の山岸哲・山階鳥類研究所長は「鳥類は近親交配を避けるため、雌が中心となり活動範囲を広げる。また、放鳥トキと同一種の中国での分布範囲をみると、新潟県全域よりも広いので、簡単に日本海を渡るのもうなずける」と話す。

 今回本州に飛来した13番は唯一雄とペアで行動し、繁殖が期待されていただけに、高野宏一郎佐渡市長は「本州のトキをこのまま放置しても、群れの形成や繁殖の可能性が低い」とコメントし、トキの連れ戻しを望んでいる。

 しかし、専門家らは安易な保護に待ったをかける。山岸所長は「捕獲はどんな方法であれ、トキに大きなストレスになる。最悪の場合ショック死することもありうる」と警告する。

 さらに、個体数が少なく、本州に飛来した原因を断定することは難しいため、冷静な観察を続けたいと主張する。「トキの周りに人が集まりすぎて定着を阻んでいることも考えられる。県北部ばかりに飛来していることから、上空の気流なども調べなければならない」とし、「今の段階で繁殖しないからといって放鳥が失敗したわけではない。冷静に見守り続けていたからこそ、貴重なデータを得られた。これを基に、雌を多めに放すなど放鳥の方法を改良するきっかけになる」と話した。

 同省もこれまで通り、けがをしたなど緊急時の保護については専門家会合で検討するが、平時には観察に徹する方針を示している。

 自由に本州の大空を舞っている3羽のトキ。人間の思い通りにならない彼女たちをどうするのかは、野生復帰のあり方を問う本質的な問題だと思えてくる。(3月13日 産経新聞)