新中国建国60周年講演と祝賀会、加藤紘一日中友好協会長が講演(10/25)

 長野県日中友好協会・県日中経済交流促進協議会・県日中学術交流委員会は10月25日、中華人民共和国成立60周年を記念し講演と祝賀のつどいを長野市内のホテル犀北館で開きました。約200名が出席し、加藤紘一・(社)日中友好協会会長が「激動する世界の中の日本と中国」と題して記念講演しました。

 内藤武男・県日中経済交流促進協議会会長の開会のあいさつに続き、井出正一・県日中友好協会会長が主催者を代表して「建国60周年を迎えた中国の発展は目覚しく、今や中国を抜きにして世界は語れなくなった。そのエネルギーと叡知に敬意を表したい。一方、格差や環境などの問題も大きい。日本も政権交代という激動を迎えている。宇都宮徳馬先生は「日中友好は最大の安全保障」と述べられた。日中関係がうまくいかないとアジアも世界も大変なことになる。国会議員の中でもっとも中国通といわれる加藤会長を迎えて講演をお聞きし民間団体として何をなすべきか考えていきたい」とあいさつしました。

 加藤会長はまず日中関係の現状に触れ「若者の間に嫌中感情があるが、ギョウザ事件など細かなところから1つ1つ解決して行くことが必要と思う。中国はこの60年間に貧しい社会主義国の状態からどんどん発展を続け、まもなくGDPで日本を追い抜き世界第2位となろうとしている。経済・軍事の伸びなど急激で日中関係もいろいろなところで考えていかなければならない」と述べました。

 また東アジア共同体構想などの動きに対して「中国の外交力は成熟している。米国抜きの経済構想を正面切って打ち立てるような手法を用いず、ASEAN(東南アジア諸国連合)などとの連携に前向きな態度をとっている」と指摘。「米国ともめないようにしながら、アジアの国をどうまとめて行くかが日中にとっての重要なテーマだ」としました。

 更に小泉政権のとき靖国問題が大きく浮上したが、「靖国神社の『遊就館』の展示は、アジアが列強の餌食になるのを阻止するため戦ったとの趣旨=反米が色濃く出ていて、極東裁判やサンフランシスコ講話条約なども否定する内容であり米国大使からも抗議を受け一部修正した。中国に対しては頼まれていないのに侵攻して1000万人もの中国の人々が犠牲となっている。村山談話のとおりであり、誠に遺憾なことだ」とのべ、独りよがりにならず、正しい歴史認識をもって世界と付き合って行くことの重要性を指摘しました。

 「東西冷戦が終わり、日本の政治状況も変化した中で政権交代がおこなわれたが、今後は、国民の将来の生活ビジョンと国家のビジョン=何を誇りとしていくかが問われてくる。ナショナリズムにも3つのタイプがあり@戦う=排他的ナショナリズムA競争するナショナリズムB誇りのナショナリズムがある。@はセンセーショナルで人々を扇動する上で効果的だが危ない。Aはオリンピックなどで熱狂的に応援することでほほえましい。Bは自分の国に誇りを持てることであり、もっとも大事だと思う。豊かな自然の前で平等で仲良く生きて行く、これが私の考える日本の誇りだと思う。中国の留学生の皆さんとの会合で中国の誇りは何であるか考えてくださいと言った。21世紀はアジアの時代といわれている。日本と中国がアジアのハーモニーを生み出すべく協力して行くことが大事で、そのために努力していきたい」と結びました。

 講演後に西堀正司・県日中友好協会理事長の司会で、加藤氏と井出会長が対談。加藤氏は中国の環境問題に触れ、「豊かになろうとしている中国は、環境対策に腰が重い。『日本も手伝うから一緒にやりましょう』と積極的に呼びかけていかないといけない」また鳩山政権の東アジア共同体構想に対しては「中国はまだ慎重にウォッチの段階でアメリカと対抗するような行動はとらないだろう。しかし、安倍政権や麻生政権時代には価値観を共有する国が手を結び中国を包囲するという色あいが強くにじんでいたが民主党政権は中国・アジア重視に見える」と述べました。井出会長は「日中両国政府は戦略的互恵関係を確認しているが、新政権になって日中関係が更に前進して行くことを願っている。友好協会も民間団体として努力して行きたい」と述べました。
 最後に、上條宏之・県日中学術交流委員会副会長が県短期大学の日中交流の様子を交えながら閉会のあいさつをしました。